時をかける少女

時をかける少女 通常版 [DVD]世評の高いアニメ映画である。公開後に口コミでどんどん観客動員数を伸ばしていったらしい。筒井康隆の原作、そして1983年公開の大林宣彦監督の実写映画の20年後の世界*1を描く、まったくのオリジナル作品である。まさしく青春映画の王道を行く伝統的な若者の成長譚であると、ひとまず言うことができる。しかし……。
  ヒロインはのび太ですか!
たまたま手に入れたタイムリープ*2の能力の使い方が、実にのび太的である。寝坊して遅刻したのをなかったことにしたり、解けなかった数学の試験問題をもう一度やり直して高得点を取ったり、妹に食べられたプリンを取り返したりと、まぁ、一事が万事この調子である。とにかく私利私欲にうつつを抜かし、無駄に特殊能力を浪費するばかり。絵に描いたようなだめっぷりは紛う方なくのび太である。そしていよいよその力が終わりに近付く頃、本当に使わなければならない状況と向き合わなければならなくなり、幾許かの哀しみと引き替えに人間的な成長を遂げる、という展開もまたドラえもん的である。
なるほど、そのように考えてみると、未来から来た少年*3ドラえもんで、見守る少年は静香ちゃんとなろう。小難しく種明かしをしてくれる叔母さんはさしずめドラミちゃんということか。
とはいえ、見せ方自体は決してドラえもんではなく、抑制の効いた画面はクラシック*4を多用する劇中音楽とあいまって、静かに深く物語に引き込んでくれた。エンディングまでの最後の15分、青臭い日々を思い出して、胸が締め付けられる。
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*1:原作のヒロインが、今作のヒロインの叔母として登場する

*2:自在に時間を巻き戻す能力、ただし回数制限あり

*3:彼の小道具がヒロインにタイムリープの能力を与える

*4:バッハのゴールドベルグ変奏曲が鍵