殯の森

そういえば、NHK-BSハイビジョンで放映された河瀬直美監督の「殯の森」も観たままだった。虚構ではあるが、介護施設のドキュメンタリーを見ているような気分になる。カンヌで評価されたのは、日本というローカルな特殊性に頼ってのことではなく、人は常に見えない思いに支えられて生きているという普遍的な問題を扱っているからだろう。豊かに実る作物を収穫する老人の姿や彼らの旺盛な食欲を映すことで、かえって老いから逃れられない哀しみが滲み出ているように感じた。全編を通して深い緑が非常に印象的である*1。総じて画面に置かれる色や形に深く練られたものが見える。劇的なドラマが好きな人にはきっと受けない映画だろう。そういう意味ではカンヌ向き。
公式サイト http://www.mogarinomori.com/

*1:奈良の田原地区で撮影された