夕凪の街 桜の国

「ひめゆり」のようなすばらしいドキュメンタリー映画が存在する今となっては、広島や長崎といった場所で戦争を題材にして撮影したということだけでは、もはや売りにはならない。とりわけそれが虚構作品であれば、いかに作り物臭くしないか、説教臭くしないかが肝要となろう。道徳や教訓は享受者が自ら考え引き出すものであり、他者から押しつけられたり与えられたりするものではない。
こうの史代の名作漫画を原作とする映画版、悪くはないが、よくもない。当時の原爆スラムを再現したというオープンセットや映画オリジナルのエピソードなどがどうにも作り物めいて、今ひとつ物語の中に素直に入っていけなかった。俳優は力のある人が揃っていたけれど、役名よりも芸名で動いているような感じがした。とりわけ堺正章が見ていてつらかった。主演の田中麗奈もしかり。麻生久美子は時々「時効警察」モードになっているような感じが!?　全体的に妙に小綺麗で、たとえていうならNHKの朝ドラ風の映画であった。
虚実皮膜の難しさを思う。109シネマズ箕面で鑑賞。
公式サイト　http://www.yunagi-sakura.jp/

ついでにいくつか。DVDで「バブルでGO!」を見た。ご苦労様でした＞俺。フジテレビの夏休みアニメ「ミヨリの森」も見た。安普請のジブリ寄せ集め。安易な二項対立と偏った価値観の押しつけに辟易する。蒼井優の声だけを愛でる。