やから

写真つながりの知人であるravさんのmixi日記に「やから」ということばについてのエントリーを見つけた*1。ちょっと気になったのでぼそぼそとつぶやいてみる。
簡単にまとめると、関西でよく使われる「やから」ということばを知っているかというものなんだけれど、関西の「やから」とくれば、まずは「そやから(そうだから)」の「やから」が思い起こされるし、私も当然それだと考えた。ところが、あにはからんや、そうではないという。
なんでも「無理難題をふっかけるクレーマー」のような存在に対して使うらしい。漢字は「輩」を当てる。関西人を長くやっているが、こうした意味で使われていることを初めて知った。少なくとも自分のまわりではまったく聞いたことがない*2。もちろん自分でもその意味では使わない。
言うまでもなく「輩(やから)」は歴とした標準語であり、関西の方言などでは断じてない。本来「輩(やから)」ということばは「仲間」や「一族」を表すものであるが、「不逞の輩」などのようにマイナスイメージのことばとセットで使われることがあるし、単独でも「あの輩のせいで……」などとよからぬ印象で語られることもしばしばである。おそらくそこから意味の一部が拡張されて、そう理解されるようになったのではなかろうか。
というようなことを考えながら、念のため手元の『広辞苑』(岩波書店)を手繰ってみると、「不平を言い、また口論をしかける者」との記述があり、近世の『日葡辞書』に用例のあることが示されている。おお、なんてこったい。知らぬは私一人だけなのか。
しかしながら、『日葡辞書』に記述があるからといって、それが現代日本語として全国津々浦々まで知れ渡っているわけではないことが気になる。事実、この意味が解説されていない国語辞典も存在する。とすると、いったん「無理難題をふっかけるクレーマー」としての用法は廃れたが、いつ頃からか関西限定で復活したと考えるのがよいのかもしれない。東京に戻らないと『日本国語大辞典』(小学館)や『古語大辞典』(角川書店)に当たれないのがもどかしい。ちょっと宿題ができてしまった。
あとこれが動詞化して「やかる」なんていう語も生み出されているらしい。別の意味で興味津々である。

*1:本来ならそっちにコメントをつけるのが筋なんだけれど、あまりに長々と書くのも躊躇われるので自分のところに書く。トラックバックを飛ばせないのが困りものである>ミクシ

*2:友人知人先輩後輩親類縁者