展示デザイナーという仕事

morio01012008-04-08

情熱大陸」(TBS系)の木下史青の回を見た。たいへん興味深かった。木下は東京国立博物館*1に勤める展示デザイナーである。意外なことに専門の展示デザイナーを置くのは、東博だけであるらしい。
東博での展示方法で印象深かったのは、2年前の「プライスコレクション 若冲と江戸絵画展*2」である。作品をガラスケースに収めることなく、むき出しのまま展示し、さらに朝昼夜のそれぞれの光で作品を照らし出して見せた。かつてはそうであったはずの連続的に移ろいゆく作品の表情を目の当たりにする。これが実に素晴らしかった。あの展示を考えたのも木下である。
博物館や美術館の展示は、たいてい暗く、狭く、画一的だ。もちろん貴重な展示物を危険にさらすことなく観客に見せることも大切であろう。しかし、作品の本質や個性がまるで感じられないのであれば、単に「お宝を並べた」という以上のものには決してならない。木下は最新の機器(光ファイバーのスポットライトや白色LEDの照明など)を駆使し、自由な発想でいかに見せるかを徹底的に考え抜いている。
私がテレビ番組から深い感銘を受けたのは、木下のそうした真摯で創造的な仕事ぶりがまっすぐ伝わってきたこと以上に、我が子を慈しむかのような作品に対する深い愛情が感じられたからである。作品とのおざなりのつきあいではとうていあのような独創的な展示方法は生み出されないであろう。
現在、東博では薬師寺展が開催中である。金堂の日光・月光菩薩立像(国宝)が揃って寺外で公開されるのは初めてのことである。もちろんこの展示も木下の手になる。番組でも一部紹介されていたが、ぜひ自分の目でこれを確かめたいと思う。
情熱大陸
平城遷都1300年記念「国宝 薬師寺展」