美術

光琳の燕子花

根津美術館で開催中の「KORIN展」を観てきた。根津美術館蔵「燕子花図」とメトロポリタン美術館所蔵「八橋図」が100年ぶりに同時に展示されるというものである。この美術館は規模こそ大きくないものの、どの企画展でも選び抜かれた逸品が展示されることが多…

ボストンの至宝

今が盛り、満開の桜を横目で見ながら(ついでに大盛りの花見客も見ながら)、東京国立博物館に赴く。 欧米最大の日本美術のコレクションを誇るボストン美術館から、まさに至宝と呼ぶべき作品が大挙里帰りしてきた。どうしてこんなものまでと思われるような傑…

古筆名筆で眼福

近世までに書写された古筆のいいとこ取りをしたずるい書物を「手鑑」という。もともとは一冊一冊の写本として存在していたものであるが、なにしろ数が少ない。ところが、武士や町人という新しい鑑賞者層が厚くなるに従って、一部でもよいから所有したいとい…

草間の水玉に酔う

国立国際美術館(大阪・中之島)で開催中の「草間彌生 永遠の永遠の永遠」を見てきた。御年80を越える草間であるが、これまでの活動を回顧するものではなく、2009年以降の新しいシリーズ「わが永遠の魂」をメインに据える意欲的な展覧会である。これに2004年…

空海>法然+親鸞

今週の火曜日に始まった「特別展 法然と親鸞 ゆかりの名宝*1」を見てきた。東京国立博物館のある上野恩賜公園界隈は、秋の行楽シーズンになっているためか、平日であるのにも関わらず、たいへんな人出だった。 ところが、東博に着くと、意外なまでに人がいな…

イケメン仏にうっとり

書くのをすっかり忘れていた。東京国立博物館*1で開催中の「空海と密教美術」展にでかけていたのだった。もう一ヶ月ほど前のこと*2。人気になるだろうという声が聞こえていて、混んでいたら嫌だなぁと思いながら、平日の昼下がりに出向いた。入館するのに列は…

青山で古筆切を見る

根津美術館*1は建物や庭がすばらしく、でかけること自体が楽しみである。強烈な夏の日差しを青山のお洒落な建物*2で避けながら、美術館を目指す。 8月14日まで開催されていた「古筆切 ともに楽しむために」では、この美術館が蔵する四十数点の古筆切を展示し…

役者は揃った。

傘を差して上野へ。東洲斎写楽の特別展にでかける。雨の平日の夕方、東京国立博物館*1は人少なで快適だった*2。 もともとは4月から5月に催される予定だったものが、震災の影響でひと月遅れの会期となった。写楽の活躍したわずか10ヶ月に残されたほぼすべて…

運慶に酔いしれる

羽田空港を使う時以外には乗ることのなかった京急で金沢文庫*1にでかけた。金沢文庫が鎌倉にあると思い込んでいたのは内緒である。 さて、運慶である。 金沢文庫で「運慶展*2」が催されるのは、2007年に隣接する称名寺所蔵の大威徳明王像(金沢文庫保管)が…

ルーシー・リーの陶芸

大阪中之島にある市立東洋陶磁美術館*1で今日から「ルーシー・リー展*2」が始まった。会期は2月まであるのだけれど、そのうちになどと油断していると、東京の時のように見逃してしまうおそれがある。急に降り出したわずらわしい雨をものともせず、初日に張…

秋の宇治

古臭いものが見たいという娘*1を連れて、宇治へ出かけてきた。 秋の行楽シーズン真っ直中の京都はどこも人でごったがえしている。京都駅から一駅目の東福寺でも大勢の客が降車していった。そろそろ紅葉も終わりを迎える頃だから、この週末の通天橋は崩れ落ち…

春画に漫画

「芸術新潮」の表紙を見て、ああ、そうだ、今月の特集は春画だったと思った瞬間、それをレジに運んでいた。別にこれである種の刺激をもらおうというのではなく、前月の同誌の予告で、秘匿すべきエロをポップカルチャーとして捉え返そうという目論見がおもし…

世田谷で源氏物語絵巻

平安時代にものされた源氏物語の写本は残っていない。世に喧伝される「千年生き残った世界文学」の正体は案外儚いもので、古くても鎌倉までしか遡れないのである。だからこそ平安期に作られた源氏物語として「源氏物語絵巻」が珍重されるわけである。 現存す…

京都で過ごす日曜日

なかなかオフにならない娘の部活が、折良く休みとなったので、所望されていた古臭いものを見せに京都に連れて行く。 朝の遅い時間に出発する*1。着くともう昼時である。駅地下のポルタにある東洋亭でハンバーグなどを食する。最初に出てくるトマトサラダ*2は…

斑鳩町のアイドル

仏像なんて古臭いだけの遺物と思っているうちはどれがどれでもどうでもいい。さすがに東大寺の盧舎那仏みたいに規格外の大きさを持っているとか、阿修羅のように愁いを帯びた表情とタラバガニのような腕があれば、うん、確かに違うねと言えるだろう。でもそ…

一休探幽等伯

催事の続く職場に出かけても仕方がないので、さっさと大阪に戻ってくる。雪を頂く富士山が見事な姿を見せていた。 京都で降りていいものを拝みに行く。昨日から始まった「第46回京都非公開文化財特別公開」で、普段見ることのできない文化財に接することがで…

年内のいいもの

今年も残すところあと二ヶ月となった。いいものがたくさん公開されていて、しんみりしている暇などない。備忘録代わりに記しておく。 ゴッホ展 国立新美術館 〜12/20 ドガ展 横浜美術館 〜12/31 特別展住吉さん 大阪市美術館 〜11/28 蔦屋重三郎展*1 サント…

応挙の松

屏風に描かれた松といえば、長谷川等伯の「松林図屏風」(東京国立博物館蔵:国宝)のことがただちに思い起こされる。深遠なる空間に明滅するかのように揺蕩う松林の姿はただただ美しい。その等伯から遅れること約200年、円山応挙にも息を飲む松の屏風の名品…

東京で東大寺を見る

今年の東京国立博物館は東大寺である。昨年は興福寺、一昨年は薬師寺であったから、奈良の大古刹が続いて帝都に招かれたことになる。 しかし、今年の「東大寺大仏 天平の至宝」展が過去二年のものと決定的に違うのは、名前だけで高い集客力を誇るアイドル仏…

太陽の塔のリアルモデル

万博公園に行くと、入り口付近で太陽の塔グッズがあれこれと売られている。お土産にはもってこいの限定品などもあり、愛好者としてはつい片っ端からということになりそうな危険ゾーンである。かくいう私めもフィギュアやクリアファイルなど諸々手に入れてし…

上村松園展

十日前に訪れた日本武道館傍の東京国立近代美術館*1にでかける。 明治、大正、昭和と活躍した上村松園の回顧展*2が開催中である。松園の作品では晩年近くに制作されたものがよく知られている*3。今展ではこれまであまり表に出されてこなかった初期の作品も展…

上田秋成没後200年

二日続けて京都へ。それにしても暑いことこのうえない。 京都国立博物館では没後200年を記念して上田秋成展が開催中である。いつもなら京都駅から歩いて往復するのに、今日は往路でバスを使った。汗まみれではゆっくり鑑賞どころではない。 工事中でさえない…

中之島で束芋

国立国際美術館で開催中の束芋の展覧会「断面の世代*1」を観てきた。兵庫県出身の彼女にとって7年ぶりの関西での個展である。 5つのインスタレーション(アニメ)と新聞小説の挿絵の六つのコーナーからなる。一見なんだかよくわからない。 今回の個展タイ…

8世紀から19世紀へ

今日もおやつ時くらいから美術館巡りをする。心持ち涼しくなった頃に人も少なくなるからちょうどいい。 三井記念美術館*1 「奈良の古寺と仏像」*2 ブリヂストン美術館*3 「印象派はお好きですか?」*4 日本でも有数の企業・財団が経営する私設美術館である。…

芸術の真夏

お日様が傾きかけるまでは家の外に出たくない。そう思うほど暑い。日射しが痛い。おやつ時を過ぎる頃にようやく家を出た。 遠藤志岐子針穴写真展「水の流れる町で その3」*1 オルセー美術館展2010「ポスト印象派」*2 清澄白河から六本木をはしごして、綺麗…

見た、訊いた、買った、らしい

興味深いけれどちょっと鼻につく感じがしていた「芸術新潮」の連載が、一冊にまとめられた。清住白河で現代美術のギャラリーを経営する筆者が、古美術品を自腹で買うという企画である。 あまり高いものは買わないと言いながら、75万円の黒田辰秋の花器や80万…

光琳燕子花と広重江戸百景

江戸時代の絵画を楽しむ一日になった。 まずは青山の根津美術館*1で尾形光琳の「燕子花図屏風」(国宝)を愛でた。この美術館きっての逸品である。週末であるのにもかかわらず、さほど混んでもいなかった。これだけだと集客力はそれほどでもないのだろうか。…

松と猿に萌える

初日を迎えた「特別展 長谷川等伯」を見てきた。上野の駅から歩いて行くと、春の陽気に誘われたのか、大勢の観光客らしき人たちが思い思いに散策を楽しんでいる。幸い、博物館は混んでおらず、待ち時間なしで入館することができた。 没後400年の節目に開かれ…

小村雪岱で思う

Amazon KindleやApple iPadなどによって、電子出版の世界がますます注目される一方、紙媒体の本や雑誌は斜陽の一途を辿っているように見える。昨年は自分の本業に関わる老舗月刊雑誌が二誌も休刊という名の廃刊になってしまった。ベストセラーを眺めても、ご…

=草間彌生 わたし大好き

先日のエントリーに書いた「Pen」の草間彌生特集はたいへん読み応えのあるものだった。草間に関心のある者は必読の一冊だろう。そしてそこでも紹介されている草間彌生を追いかけたドキュメンタリー映画「=草間彌生 わたし大好き」(松本貴子監督)もまた必…