本谷三昧@DVDだけど

遭難、一昨日に続いて本谷有希子ネタ。かねて本谷の劇団*1の舞台を観たいと思いながら、これまで果たせずにいる。たいそうな人気でチケットはプラチナ化し、容易に手に入れられないようである。「ちぇ」などと吐き捨てながら、歯噛みしていたところ、第10回鶴屋南北戯曲賞を受賞した「遭難、*2」がDVD化されたので、さっそく買い求めたのであった。
本谷の作品の主人公はいずれも強度の自意識に絡めとられたパラノイア的気質を有する。とめどなく湧き出る邪悪な妄想によって、周囲の人間は否応無しに巻き込まれ、事態はどんどん深刻な方向へ進んでいく。その理不尽さや暴力性の醸し出す滑稽感、哀切感、絶望感の配合の妙こそが本谷の世界の醍醐味であろう。
「遭難、」は、生徒の自殺未遂を契機にして修羅場となった中学校の職員室を舞台とする。程度の差こそあれ、教師も親も生徒も「自分がかわいくて何が悪い」「自分大好き」という思いを抱えているものだから、何一つ収まらないのである。お互いが主張し合う「正当性」の落としどころはもちろんない。作品タイトルの「遭難、」は実に言い得て妙である。結末がすごかった。
一緒に注文した「腑抜けども、悲しみの愛を見せろ*3」は、牧歌的なエンディングに改変された映画*4とは違い、苦い気分のままで幕を閉じる。好みで言えば、原作(小説・舞台)がよいと思ったけれど、どちらも物語自体が破綻しているというわけではない。俳優は断然映画の佐藤江梨子(姉役)と佐津川愛美(妹役)の方がよかった。もちろんこれも好みです。
秋のパルコでの公演*5はぜひとも見に行きたい。今から闘志満々である。