実録・連合赤軍 あさま山荘への道程

実録・連合赤軍 あさま山荘への道程 [DVD]仲間を大切にしない人たちは、世の中を変えたり、ましては世の中をよくしたりなど、けっしてできないのだということが、よくわかりました。
やれやれ。「仲間」を「国民」に読み替えたら、どこかの国の政治と同じではないか。
この映画がまったきドキュメンタリーでないことを承知の上で言うならば、ここに描かれる若者たちのしていたことは質の悪い「ごっこ遊び」「劣化したパロディ」でしかない。事件の引き金になった山中での軍事訓練などギャグとしか思えない。ただこうしたことを半世紀も後から遠い目で批判的に語ったり、90年代のカルト宗教の引き起こした事件と同一視したりしても、何も言ったことにはならないだろう。文学や芸術を教導主義的な観点から捉えることはしたくないが、こうした悲喜劇的な出来事から普遍的な「何か」を学ぶのは決して不毛なことではない。若松孝二監督が21世紀にこの事件を題材にした意味もそこに求められると思われる。
3時間を越える長尺である。しかし、退屈したり時間が気になったりすることはない。前半の歴史的事実を整理していく部分から、中後半の連合赤軍内部の崩壊と惨劇を描くところまで、緊張感をもって一気に見せてくれる。多くの俳優が登場するため、演技レベルにばらつきを感じたが、やはり永田洋子を演じた並木愛枝と森恒夫を演じた地曵豪は強烈な印象を残した。狂気が加速する後半の二人の言動は怖気が収まらない。なかでも坂井真紀をはじめとする女性メンバーへの永田の嫉妬や憎悪は凄まじいの一言に尽きる。並木はそれを目の動き、顔の角度だけで見事に表現している。重信房子を演じた伴杏里はなかなかいいなぁと、まったく事件や映画の内容とは関係ない次元で観ていたのは秘密。
結局、連合赤軍はアニメや漫画でおなじみの「世界制覇を目指す悪役」と同じで、活動すること自体が目的となってしまい、制覇した後のビジョンがまるでないことが最大の問題であろう。お題目のように「共産主義化」「反体制」「革命的死」などを並べていたが、空疎で何も伝わってこない。折しもチェ・ゲバラがこの国でヒーローのような扱いを受けているらしい。善し悪しはひとまずおくとして、彼我を比べて自分の頭と心で何かを考え感じるのは素敵なことである。
映画そのものと関係するようなしないようなことを思いながら観ていた。職場にはまさにこの60年代の安保闘争から大学紛争時代をリアルタイムで熱く過ごした人たちがいて、彼らがあの争乱の中にいたのかいなかったのかはもちろん与り知らないことではあるが、会議などでのアジテーションを聞いていると、どうにもやるせない既視感があるのである。やっぱりやれやれ。