うちの猫

8歳半の愛猫を年に一度の検診と三種混合ワクチンの接種に連れて行く。この猫が家から出るのはこの機会しかない。ということは、生涯でまだ10回くらいしか外に出たことがないということになるのか(除くベランダ)。
娘が小学校1年生の時にやってきた猫である。たまたまつれあいの同僚がアメリカンショートヘアのブリーダーと知り合いだというので、そこから直接譲ってもらった。無数(に見えた)の猫が走り回るブリーダー宅で、前の月に生まれたばかりの幾匹かの子猫の中から選んだ。子猫たちは、皆、うちで引き取ることになる猫につける予定の名前で呼ばれていた。なんだかおかしかった。あらかじめ名前*1を伝えておくと、それで慣らしておくと言われたのだ。結局、引き取ったのは、姉妹兄弟で元気よくじゃれ合うやつではなく、部屋の隅でひとり玩具のネズミと戯れていた雌猫である。顔の造作が我々三人の好みに合ったこと、彼女の天邪鬼な単独行動がなんだか孤高に思えたことが決め手になった。
どの動物もそうなのだろうが、彼女はきちんと自分の立場や位置を把握している。うちの場合は「つれあい>猫>私>娘」という順で力が強いと思っている。しかし、「最弱の手下」に手出しすると「最強の天敵」が厳しい罰を下すので、いきおい諸々の鬱憤の捌け口に選ばれるのは私になる。一頃は生傷が絶えなかったし、今でも遠慮なく挑みかかってくる。なんというやつ。でもそれも愛情表現の形だと思っている。宵っ張りなところも夜行性の猫と遊ぶのにはちょうどいいらしい。おかげで仕事が滞ることもしばしばあったけれど、それ以上に安穏な気持ちにさせてもらうことが多いので、ちっとも苦にはならない。
私が家で仕事をしていると、たいてい足下に寝そべるか、机の上に飛び乗ってパソコンの横に陣取る。だから東京で勤めるようになってからは、いるはずのものがいなくてやるせない時がある。猫は電話にも出ないし、メールもくれない。でもたとえできるとしても、きっとしない。それが猫。せいぜい長生きしてもらいたいと願う。
IMG_0102 IMG_0105
検診帰りの猫をiPhoneで写す。この後、私の手に戯れかかってきて、思い切り猫パンチされた。

*1:命婦おとど」という名にしたいと主張したけれど、圧倒的な勢いで二人に却下された