デトロイト・メタル・シティ

デトロイト・メタル・シティ スペシャル・エディション [DVD]喪に服している最中に見た。これほど似合わない映画もないだろうが、これほど気晴らしになる映画もないと思う。とても楽しめた。
夢見ていたことと実現することは往々にして乖離してしまう。哀しいくらいに。この物語の主人公もお洒落で可愛いポップアイドルを目指していたはずが、なぜか気がついた時にはデスメタルのカリスマとなってしまっていた。額には「殺」なんて書いてあるし、歌い上げる曲も「SATSUGAI(殺害)」というとんでもないタイトルである。望まずして正義のヒーローになってしまったハヤタ隊員@ウルトラマンや本郷猛@仮面ライダーの悲哀と苦悩と使命感をつい思い出してしまった。
理想と現実の狭間で悩み苦しむという点で、根岸の懊悩はすなわち私たちの懊悩でもあろう。極端にカリカチュアされた映像から自分自身の姿を思い浮かべることは困難な作業ではない。しかし、思うに、同じ音楽産業に生きているのであるから、それはそれで結果オーライな気がする。物語の最後で主人公がそのことに気付くのは幸せなことであろう。天命は受け入れるしかないね。
ヨハネ・クラウザーII世&根岸崇一を演じる松山ケンイチはもとより、デトロイト・メタル・シティのバンドメンバー二人(細田よしひこ秋山竜次)の好演が強く印象に残った。また下着を見せつけながらエッチな台詞を吐き、バンドの所属する事務所社長になりきっていた松雪泰子もすごい。その他周辺の人物も癖者が揃い、にやにやさせられること、請け合いである。キッスのジーン・シモンズまで登場して吃驚する*1
多幸感に包まれた含蓄のある映画である(ほんと!?)
公式サイト http://www.go-to-dmc.jp/index.html

*1:デーモン木暮も出してやればよかったのに