助さん格さんの方が有名

20日の夜にネットで「大和文華館が『宇津保物語』屏風現存を確認、初公開」というニュース*1を目にした。平安時代を代表する文学であるのにも関わらず、いまいち知名度に欠けるというか、人気がないというか、王者である源氏物語は言うに及ばず、学校でよく習う枕草子伊勢物語土佐日記更級日記などにもきっと敵わない。かわいそうな宇津保物語……。人気のなさをうかがわせるように、これまでこの物語を絵画化したものはあまり見つかっていない。それでこの江戸時代の屏風の初公開がニュースになるわけである。
来週末には東京に戻らなければならないので、善は急げとばかり、公開初日の金曜日に出かけてきた。ただ奈良まで行ってこれだけではもったいないので、近くの薬師寺*2唐招提寺*3にも立ち寄ることにする。もちろん仏像目当てである。
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今春の東京国立博物館の「阿修羅展*4」の人気はすさまじいものがあったけれど、昨春の「薬師寺*5」も負けず劣らずたいへんなものであった。目玉はこの寺の日光菩薩月光菩薩である。日光と月光は薬師如来の脇侍、つまりは部下(?)なのに、このチームの大将である薬師如来よりも人気が高い。かわいそうな薬師如来……。同じく国宝なのに。でも三体が並んでいるところを見ると、脇の二体にはえもいわれぬ華のようなものがあるのね。優美な曲線を描く立ち姿をじっと見ていると、不思議な気分になってくる。しかも東博の時にはありえない人の少なさ。ありがたや。東院堂の聖観音菩薩(もちろん国宝)の気品のある姿にもうっとりする。
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国宝の荒波に揉まれたところで、唐招提寺に移動する。10分も歩けば、「天平の甍」で有名な金堂の屋根が見えてくる。ただ現在は平成大修理の期間中であり、金堂はもとより内部の仏像も拝むことができない。あらかじめわかっていたことながら、有名な千手観音立像を見られないのは残念至極である。その分、講堂や新宝蔵のお宝をじっくりと味わってきた。ここでは如来形立像、通称「唐招提寺のトルソー*6」にムラムラする。体のラインがすばらしく美しい。そしてここも人少なである。ありがたく重要文化財を独占する。平日万歳。
もうほとんどお腹いっぱいになっていたけれど、最初の目的である宇津保物語の屏風のために大和文華館*7に向かう。えーと、あまりおもしろくありませんでした。別に展示されていた「寝覚物語絵巻」(国宝)の方が断然すばらしかった。こうして宇津保はまた不人気を託つのであった。
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