平安のハロプロを見る

morio01012009-08-23

仏像をトランプにしている世界遺産がある。宇治の平等院*1だ。
前回この地を訪ねたのは源氏物語ミュージアム*2が開館して間もない1999年1月のことだから、もはや10年以上も前の出来事である*3。歳を取るわけである。当時は平等院の誇る最新美術館である鳳翔館*4もまだ完成はしていなかった。どうやらお茶目なお土産類は新世紀になってから鳳翔館とともに一挙に現れたとおぼしい。この夏は近隣の世界遺産を巡ってきた。行かねばなるまい。トランプのためにも。
駅に降り立ってから日曜日であることを思い出し、嫌な予感を抱いたまま平等院に辿り着くと、案の定、観光客(>私もだ)であふれかえっていた。鳳凰堂の内部観覧はなんと1時間待ちである。まさかここで待たされるとは思いもしなかった。まぁ整理券で時間指定されているので、それまでは自由に動ける。小雨が落ちてきたこともあって、さっそく鳳翔館に向かった。

【おまけ】iPhone鳳凰堂をパノラマ写真として仕上げてみた。
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エントランスでは格子の向こうにあやしく浮かび上がる梵鐘(もちろん国宝)の演出の素晴らしさにまずは驚かされる。CGを駆使した平等院の紹介映像を見せられてから、ここのお宝が収められた部屋へ進んでいく。いろいろ持ってますね、平等院。この地で最後を迎えた源頼政縁の品々の展示もちょうど行われていた。
圧巻は2体の鳳凰像と雲中供養菩薩である。トランプになったのもこいつらである*5。いずれも平安時代の仏師定朝あるいは彼の工房、関連団体で作成されたとおぼしき名品である。特に雲中供養菩薩26躯*6が展示される雲中の間は、一歩足を踏み入れた瞬間に「嗚呼」と声を漏らしてしまうほどであった。もともとは鳳凰堂内部の高い位置に飾られていたため、細かな造作や表情を見ることができなかったのであるが、ここでは目の前でそれを愛でることができる。一体一体のポーズのおもしろさは格別で、「踊りまくる」「演奏しまくる」「祈りまくる」など、「こいつら、ほんとにレベル2の菩薩か、解脱にはほど遠いんじゃないのか」と思わずつっこみたくなるユーモラスな姿が可愛らしすぎる。このはじけ方はまさに平安のハロプロである(今ならAKB48か?)。しかもこのお茶目な仲間たちはすべて国宝なのである。いやはやなんとも。
  雲中供養菩薩→http://www.byodoin.or.jp/tanbou-ko-untyu.html
あんまり素敵なので、鳳凰堂の内部観覧の後、もう一回ここに戻ってきてしまった。定朝唯一の遺品である本尊阿弥陀如来坐像の抜群の存在感はそれとして、今日のところは空を飛び交う彼らにすっかり夢中になってしまった。そして今日の収穫物。『雲中供養菩薩写真集』(全部載っているのだ!)、平等院シール(雲中供養菩薩や鳳凰がシルエットになっている!)、雲中供養菩薩クリアファイル(全員集合!)、雲中供養菩薩トランプ(これが目当てだ、はずせない)。次に商品化を望むものは雲中供養菩薩フィギュアしかない。ガチャポンにしてくれたら、全部揃えるまで回して回して回して……。私以外にもほしい人は多いだろうから、きっとものすごく売り上げがあると思う。
藤原頼通は、マイケル・ジャクソンが自宅をネバーランドと呼び、遊園地化した心持ちをよく理解できると思う。父親の別荘をこんな極楽テーマパークにしたんだから。
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美しい蓮の花が咲き、宇治川の流れは激しく、宇治上神社脇で見る空は秋の色で、鳳凰堂の朱塗りの格子は素敵だった。

*1:平等院 http://www.byodoin.or.jp/

*2:源氏物語ミュージアム http://www.uji-genji.jp/

*3:琵琶湖からの川下りコースを自転車で走り抜けた際に通ったことはある

*4:鳳翔館  http://www.byodoin.or.jp/byoudouin.html#kousou

*5:トランプ http://www.byodoin.or.jp/museumshop/mart/goods-html/museum-p04-01.html

*6:残り26躯は元の場所にある