上野徘徊

morio01012009-10-28

上野で開催されている二つの展覧会を見に行く。行楽シーズンの上野恩賜公園は遠足の子どもたちや秋を楽しむ人たちで大いに賑わっていた。水曜日だから、ちょっと不思議ではあるのだが。自分のことは棚上げです。
その1 冷泉家 王朝の和歌守展*1東京都美術館*2
入るなり、俊成「古来風躰抄」、定家「拾遺愚草」、為家「七社百首」、為相「文保百首」の自筆本4連発で、ノックアウトを喰らいそうになる。家祖から始まり、明月記、勅撰集、私家集、歌書とテーマごとに分けられた展示室では、平安時代後期から鎌倉時代の写本がこれでもかというくらい並べられている。その大半が国宝、重要文化財に指定されている。なんと豪華なラインナップであろう。写真でしか見たことがなかったものや活字で読んだだけのものが、目の前にずらりとあるのだ。絵がないので派手さはない。しかし、これ以上の目の保養はめったにない。恐るべし、冷泉家*3。後期ではすべてが展示替えされるので、そちらも必ず行く。

冷泉家は三代つづけて勅撰撰者となった藤原俊成、定家、為家を祖に持ち、歴代が宮廷や武家の歌道師範をつとめた家柄です。京都御所にほど近い、現存最古の公家住宅である同家の蔵には、800年の伝統のなかで集積されてきた勅撰集、私家集(個人の歌集)、歌学書、古記録などが収められ、いまなお「歌の家」として尊崇を集めています。(公式サイトより)

その2 皇室の名宝 1期*4東京国立博物館*5
入館待ちが10分というのはついていたのであろうか。粛々と列は進み、館内に入る。それにしても人が多い。とても何かを鑑賞するという雰囲気ではない。第一室の狩野永徳の唐獅子図屏風に群がる人の頭を見て、気持ちが悪くなってきた。次の部屋にある伊藤若冲の「動植綵絵」は、かつて相国寺での展覧会で一挙公開された折、あまりの人出に見るのを諦めてしまったものである*6。そして今日もまた……。肝心の絵は下三分の一をまったく見ることができない。どの絵も画集その他で幾度となく見て、頭の中に入っているものだから、気分を悪くしてまでそこに留まる理由があるのかと思い始めると、もういけない、ちっとも楽しくなくなってしまった。残りの展示室は駆け足気味で通り抜け(抱一「花鳥十二ヶ月図」と応挙「虎」の前だけは少しゆっくりと)、図録だけ買ってさっさと出てきた。第2期もいいものが出されるのだけれど、展示位置が下の方になるはずのものばかりゆえ、たぶん行かないと思う。あの鑑賞方法、なんとかならないものかね。