=草間彌生 わたし大好き

≒(ニアイコール)草間彌生~わたし大好き~ [DVD] (NEAR EQUAL KUSAMA YAYOI)先日のエントリーに書いた「Pen」の草間彌生特集はたいへん読み応えのあるものだった。草間に関心のある者は必読の一冊だろう。そしてそこでも紹介されている草間彌生を追いかけたドキュメンタリー映画「=草間彌生 わたし大好き」(松本貴子監督)もまた必見の作品である。とにかくこれだけ「動く草間彌生」を見ることのできる媒体は他にはない。
映画は2008年に公開された。カメラは、一年半の間、草間彌生に密着し、彼女の創作活動のありようを見せてくれる。あの偏執狂的な水玉や網目、連続する文様が生み出される現場を見ることができるだけでも価値がある。
もちろんこの映画で描出される前衛芸術家は、「草間彌生」という人間のある一面でしかない。それでもふと漏らす一言や息づかい、ちょっとした表情の変化には嘘や演出はない。月並みな言い方であるが、一挙手一投足のすべてに引き込まれるような強烈な魅力がある。人によっては傲慢、尊大、自意識過剰など負の側面ばかりが目につくかもしれない。しかし、私たちは草間に道徳や絶対正義を語ってほしいわけではない。良くも悪くも草間は草間だ。
  わたし大好き
その強烈な自己肯定の精神は、他を圧倒する才能や努力があってこそのものである。この金言の意味するところを浅薄なレベルで捉えることはできない。