名刀美女丸

名刀美女丸 [DVD]1945年2月に公開された映画である。当時は撮影用フィルムも配給だったとのことで、1時間程度の作品しか撮ることができなかったらしい。溝口健二に師事した新藤兼人は「食うために作った映画」(DVD収録のインタビュー)と言い、この作品をまったく評価していない。
確かに戦時中ならでは仇討ちものであり、内容に目新しさを感じることはない。しかしながら、自らの未熟さから主君を死の淵に追いやることになってしまった刀鍛治清音の苦悩、自己嫌悪、憤怒などの情はよく描かれていると感じたし、当代きってのスター山田五十鈴も、父を失った武家の一人娘のあるべき姿を凛々しく演じていると思った。見所は凡庸な筋ではなく、きっと俳優たちの芸なのであろう。
それにしても、公開当時、どれほどの人がこの映画を観たのだろうか。東京大空襲の前月、終戦まであと半年。