羅生門

羅生門 [DVD]私には「小津安二郎vs黒澤明」は「木村伊兵衛vs土門拳」と同じ対立構図に見える。そしていずれも前者に比して後者が苦手である。安易な二項対立は対象の本質を見誤るおそれがあるものの、もうかなり長い間この印象は変わらないので、私の中での評価軸が揺れることはない。もちろん世評や他者の嗜好を否定するものではない。念のために。
何年ぶりかに観た「羅生門」はやはり黒澤演出のオーバーアクションが興を削ぐ。出る人出る人「がっはっは、がっはっは」と下品に笑うのだけはどうにかしてもらいたい*1。ストーリーや構成、テーマの秀でたところは原作者芥川龍之介の力に因るところが大であり、なおかつそれを載せるメディアとしては、より想像力の働く余地のある小説の方に分があるように思えるのである。単純に映画と小説の比較をしても仕方がないのだけれどね。
では映画のよさはと考えてみれば、活劇としてのおもしろさだろうか。しかし、そこで「がっはっは、がっはっは」に代表される過剰な演出があって、やはり気に入らない。エゴイズムを目に見える形で徹底的に形象化したところには凄みを感じる。1950年、黒澤明監督作品。

*1:誰に言っているのだか