愛のむきだし

愛のむきだし [DVD]園子温監督の「紀子の食卓」は世評も高く、DVDも手に入れているのに、いまだに棚に収まったままである。それで「時効警察」のいくつかに脚本と演出で参加しているものしか知らない。これはこれで楽しんだものの、「愛のむきだし」を劇場で、とまでは気分は高まらなかった。まったくもって鈍いことであった。
247分の長尺、DVDだと2枚に分けられている。しかし、長さを感じることなどなく、一気にエンディングまで辿り着いてしまった。やや意味不明気味なタイトルも、見終えた後ではなるほどと思えてくる。とにかくいろいろな「愛」と「愛の欠如」がむきだしになって放り込まれている。
映画の中でパンチラと変態と勃起と盗撮ということばをいったいどれだけ耳にしたのかわからない。あ、目にもしている。カルト教団、監禁、アクション、高校生活、刃傷沙汰、リストカット、殺人、家族愛、レズビアン、精神病院……。そして何より純愛。よくぞこれだけの要素を一本の映画に詰め込んだと思う。しかも、破綻も飛躍もせずに繋がっている。
ハ虫類みたいに気味の悪い安藤サクラの存在感と満島ひかりの不機嫌な少女の気配がたいへん印象的である。西島隆弘も歌手が本業とは思えない好演で、最後は泣けてきた。ただし一般的な意味でウケル映画、泣ける映画ではない。好みに合わない人もきっと多いと思う。あらすじを語れないような文学や映画が好きな人に奨める。棚に並べたままの「紀子の食卓」、すぐに観よう。
 「愛のむきだし」公式サイト http://www.ai-muki.com/