蜘蛛巣城

蜘蛛巣城<普及版> [DVD]シェークスピアの「マクベス」を日本の戦国時代の物語に翻案する。
欲望に取り憑かれた鷲津浅茅の悪魔の囁きが彼女の夫武時を破滅の淵へと導く。実体化した物の怪が登場し、行く末の予言をするなど、リアルな戦国模様を描くというよりは一種のファンタジー、夢語りとして見るべきものであろう。もちろん原作の趣は注意深く消し去られており、背景を知らずとも、この映画をきちんと楽しむことができる。
三船敏郎のテンションの高い熱演と、山田五十鈴の底意地の悪そうな冷徹さが見物だろう。多人数のエキストラを使っていることはわかるけれど、合戦の迫力自体はいまひとつ伝わってこない。ラストシーンで武時が味方から無数の矢を射かけられるシーンは、見ているこちらがむずむずしてきた。
1954年。黒澤明監督。