幕末太陽傳

幕末太陽傳 [DVD]古い映画を観ると言っても、やみくもに手を出すわけにもいかず、去年の12月に刊行された『オールタイム・ベスト 映画遺産200 日本映画篇 (キネ旬ムック)』なぞを手引きにして選んでいる。何事も先達はあらまほしきもの、であろう。
このムックで挙げられたベスト3は「東京物語」「七人の侍」「’浮雲」であり、小津安二郎黒澤明成瀬巳喜男の巨匠三人をいい塩梅に配したと見るのは穿ち過ぎだろうか。それはともかく、この三作に続いて第四位に置かれたのが川島雄三監督の「幕末太陽傳」(1957年)である。よく知られる名作古典落語の幾編かを時代劇コメディに仕立て直している。すなわち「居残り佐平次」をベースにして、「品川心中」「三枚起請」「お見立て」などをエピソードとして盛り込む。
とにかく最初から最後まで賑やかである。気風のいい江戸下町の言葉が飛び交い、走り回って騒いで暴れる。それをフランキー堺石原裕次郎小林旭南田洋子岡田真澄菅井きん金子信雄山岡久乃ら名優たちがやっているのだから実に豪華なものである。まるで「真っ黒な出汁の料理」のようで、これはどこをどう切っても東京の映画なのだなという強い印象を持った。少々味が濃すぎて胃もたれしそうだったけれど、あくまでもこちら側の問題であろう。
古典落語を物語の骨子として使うテレビドラマに「タイガー&ドラゴン」(TBS、2005年)があった。「幕末太陽傳」を見ながら、あのおもしろかったドラマのことを思い出し、さらにはそれに出演していた蒼井優*1のことも。かなり強引な結び……。

*1:「本とマンガ」を特集する「an・an」の最新号を買った。表紙は蒼井優! http://magazineworld.jp/anan/1698/read/