松と猿に萌える

morio01012010-02-23

初日を迎えた「特別展 長谷川等伯」を見てきた。上野の駅から歩いて行くと、春の陽気に誘われたのか、大勢の観光客らしき人たちが思い思いに散策を楽しんでいる。幸い、博物館は混んでおらず、待ち時間なしで入館することができた。
没後400年の節目に開かれるこの展覧会は「その名品を網羅した、最大にして最上の回顧展」と銘打つ決定版である。国宝3点、重文30点を含む国内に存在するほぼすべての等伯の作品を一挙に公開する。思えば、等伯の最大のライバルであった狩野永徳の回顧展が催されたのが2007年秋のこと*1であり、21世紀になってようやく桃山時代の両巨匠の作品を等しく位置づけるような展覧会が開催されたのはめでたいことである。
なにしろ等伯の「松林図屏風」が好きなのである。初めて見たのは同じ東博で2008年夏に開かれた「対決 巨匠たちの日本美術*2」の時であり、ここで永徳の「楓図」と並べて展示されていたのだった。もう感嘆の溜息しか出ないほどの豪華な競演だった。「今回はどこに出てくるのだろう」とドキドキしながら展示室を経巡っていると、最後の最後にご登場である。焦らしに焦らされた後にようやく対面でき、感激も一入である。この屏風の前だけで小一時間もいたような気がする……。まったくもって俺の「松林図屏風」状態。
他にも昨秋智積院で見たばかりの「楓図」「松に秋草図屏風」(いずれも国宝)にも再会する。絵の素晴らしさは揺るぎないものの、これは京都で密やかに見るべきものかなと思った。他にも高さ10メートル幅6メートルに及ぶ仏涅槃図に圧倒されたり、今の写真館の親爺よろしく多くの人の肖像画を描きまくっていてほほえましかったり、若い頃には仏画をたくさんものしていたことを知ったり、見所が多くてもうたいへんである。墨で描かれた猿も虎ももちろん可愛い。非公開の大徳寺三門の壁画天井画を再現しているコーナーもすばらしかった。
お土産に選んだのは、図録と「松林図屏風」の大きな絵葉書と一筆箋、「竹虎図屏風」の虎のクリアファイル、そして「枯木猿猴図」の猿のぬいぐるみ!である。もうなんでもありなのね。3月22日まで。なお4月から5月にかけて、京都国立博物館でも開催される。
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帰宅後、tikitで近所の羽根木公園に梅を見に行く。人出のわりに花は今一つで少し残念だった。升本屋のかりんとう東京事変の新譜も手に入れた。自転車で走るのにいい気候になってきた。