チェンジリング

チェンジリング [DVD]行方不明になった息子が警察に保護されて戻ってきた。しかし、その子は自分の子供ではなかった。警察にそれを訴え出ると、こちらの精神に問題が生じているとされ、強制収容された病院で「正しい治療」を施されるようになる。やがて意外なところから事件の真相が明らかになり、そして……、とこのまま語ると完全なネタバレになるのでやめる。1920年代のアメリカで起きた事件がもとになっている。
私には、クリント・イーストウッドはもはや役者の印象より監督としてのそれの方が強い。「チェンジリング」は腐敗したロサンジェルス警察の体質を暴き立てるかのように描いてはいるが、けっして社会悪を糾弾するドキュメンタリーとして存在することを目指しているわけではない。どこまでも第一級の娯楽作品として作られている。陰鬱な雰囲気に包まれたまま、少しずつ謎を解き明かしていくミステリー調の展開に、最後まで目が離せなかった。現代の映画としては長尺の2時間半もあっという間である。運命に翻弄される母親を演じるアンジェリーナ・ジョリーの哀しみや喜びの表現に、こちらも一喜一憂する。彼女は単なるアクション俳優ではなかったのね。
深い余韻を持って提示される結末に、希望を見るか、絶望を見るか、それは鑑賞する側に任されている。2008年。