ホットペッパー、クーラー、そしてお別れの挨拶

morio01012010-05-12

2月の「わたしたちは無傷な別人であるのか?*1」公演時に先行販売していたチケットを握りしめて、初めてラフォーレ原宿に足を踏み入れる。
チェルフィッチュ*2の新作は「ホットペッパー」「クーラー」「そしてお別れの挨拶」の三つの短編を一つの作品としてまとめたものである。今の日本の労働環境を題材にする。契約を打ち切られた派遣社員の送別会をどうして同じ派遣の私たちが企画しなけりゃならないの、こういう時にホットペッパーって便利だねというところから始まり、ひたすらオフィスの冷房が強すぎることを訴え続ける正規社員の滑稽さを描写し、送別会で「えっ、それを話すの!?」的なことをとりとめもなく語る切られた社員の挨拶で締め括られる。
何も始まらないし、どこにも辿り着かない。反復する台詞と奇妙な踊りのような所作で、やるせなくシュールな現実を徹底的に洒落のめしている。どこかシチュエーションコメディのようでもあり、過去の作品に比べると、いくぶんはわかりやすさがある。ただ表現手法としては執拗なまでの繰り返しとずらしが盛り込まれており、壊れた機械が垂れ流すエンドレスのインスタレーションのようにも思える。
あのどうしようもないほどのくねくねした動きは、理不尽な現実のありようにのたうちまわる人たちの思いを象っているのだろうか。「私たちも遅かれ早かれ後を追いますんで」って台詞、笑えないけど、皆、笑っていた。