劇団、本谷有希子「甘え」

morio01012010-06-01

自意識が過剰なのに、否、過剰なばかりに、まったく自分が見えなくなってしまっている人々が、壮絶かつ滑稽な鬩ぎ合いをする。
物語が前に進んでいるのかどうかよくわからない舞台*1を見た後なので、物語らしきものがそれなりに形になっていることに少し安心しつつも、これまでの本谷の作品とはずいぶん色合いが違うことにドキドキする。「夜這い」が再三再四話題にされ、性的な会話、動作が遠慮なく押し出されている。放送禁止用語ももちろん飛び出す。

父と二人で暮らしている。母に逃げられ、寂しさに押し潰されそうな父は、夜毎私にぐちを言う。
ある日、すぐに男の子にやらせてしまう友達が泣いていて、私は慰めたくこう言った。「ねぇ、夜這いって文化が、なんでなくなったか知ってる?」 その子が顔をやっと上げてくれたので、私は一生懸命、話してあげた。いろいろと。考え方によっては、あなたのほうがずっときれいなんだよ、と。その子は「きれいなんて言われたの初めて」と嬉しそうに笑ってくれた。
その笑顔を見て、やっぱり私は実行していい、と思ったんだ。それはとても不道徳なことだけど、やっぱり実行しなきゃいけない、と思ったんだ。(公式サイト:あらすじ)

それぞれの価値観で自分の回りに慎重に線引きをし、その境界域が他者と接するとか交わるとか浸食するとか、そうした不測の事態が生じたときに起こるパニックのような反応を、うまく戯画、誇張、典型化する。そういう部分の見せ方は本谷の最も得意とするところだろう。青山円形劇場で鑑賞。舞台の丸い形と俳優達のポジション取りがおもしろかった。小池栄子は思ったよりこぢんまりしていた*2
 公式サイト http://www.motoyayukiko.com/performance/amae/

*1:チェルフィッチュとか勅使河原三郎とか

*2:どんな感想だ