上村松園展

morio01012010-09-14

十日前に訪れた日本武道館傍の東京国立近代美術館*1にでかける。
明治、大正、昭和と活躍した上村松園の回顧展*2が開催中である。松園の作品では晩年近くに制作されたものがよく知られている*3。今展ではこれまであまり表に出されてこなかった初期の作品も展示されている。その数、約100点。見応えありすぎである。
細密な筆で描き込まれた女性はひたすら美しい。ただ正直に申せば、これだけの数を見ていると、飽きてしまうところがある。あまりにも清潔でありすぎることもあるのだろうが、それ以上にモチーフに変化がない。和装の女性は大きな動きがなく、かつまったく同じポーズのものも少なくない。この印象は中期から後期になるにつれていっそう強くなる。あたかもセルフカバーを繰り返す年配歌手のごとし。むしろテクニックとしては荒削りながらも、はっとする一瞬を捉えたような若い頃の作品の方がおもしろく感じられた。
六条御息所の生き霊を描いた「焔」の妖艶さは松園の作品群にあってユニークなものであろう。息を飲む迫力があった。「浴後美人」「粧」「時雨」「長夜」「人形つかい」「化粧の図」など三十代までの作品に惹かれる。

*1:http://www.momat.go.jp/

*2:http://shoen.exhn.jp/index.html

*3:代表作「序の舞」は61歳の時の作品