世田谷で源氏物語絵巻

morio01012010-11-20

平安時代にものされた源氏物語の写本は残っていない。世に喧伝される「千年生き残った世界文学」の正体は案外儚いもので、古くても鎌倉までしか遡れないのである。だからこそ平安期に作られた源氏物語として「源氏物語絵巻」が珍重されるわけである。
現存する十九段の絵を東京の五島美術館*1と愛知の徳川美術館*2が分蔵しており、五年ごとに互いに貸し借りをして、全巻展示を行っている。今年は世田谷にある五島美術館の番である。
源氏物語絵巻」はこれまでに何度か実見している。五年前*3と十五年前に徳川美術館で全巻を見た。それ以外にも関連展示物として一部出されているのを見たこともある。しかし、五島美術館での全巻展示は未見である。十年前の折は同業の仲間に図録だけ買ってきてもらった*4。世田谷にいて世田谷で見ないということはないだろう。自転車を二十分走らせた。
会期終了まで残り一週間、入館の大行列も覚悟していた。ところが、館外に溢れるほどの人波はなく、中の椅子に四十分ほどおとなしく座っていると、あっさり中に入ることができた。やや拍子抜けする。展示室もほどよい人数に制限されており、絵も詞書もゆっくりと鑑賞することができた。壁に掛けられない大和絵や書は、低い位置に平面に置かれることが多く、人が多いとまったく見えなくなってしまう。今回の展示はそのあたりに工夫がされており、胸くらいの高さに絵巻をセットする鑑賞台が設けられていた。こんなに間近に見ることができたのは初めてである。ガラスを突き破らんばかりの勢いで絵巻を睨み付けた。眼福。
展示室内をゆっくり三周ほど巡ってから外に出る。本業のプレゼンのようなものをする時に使うために、図録と絵葉書セットを全部(!)買ってきた。28日まで。次は10年後ですよ。

*1:http://www.gotoh-museum.or.jp/

*2:http://www.tokugawa-art-museum.jp/

*3:http://d.hatena.ne.jp/morio0101/20051202 当時岐阜現在東京のあの人に教えてもらった新幹線ホームのきしめんを食べられず、無念の涙を流した

*4:十年前は大阪在住