運慶に酔いしれる

morio01012011-02-16

羽田空港を使う時以外には乗ることのなかった京急金沢文庫*1にでかけた。金沢文庫が鎌倉にあると思い込んでいたのは内緒である。
さて、運慶である。
金沢文庫で「運慶展*2」が催されるのは、2007年に隣接する称名寺所蔵の大威徳明王像(金沢文庫保管)が運慶晩年の作であることが判明したのがきっかけとなっている。そして今回の特別展は、運慶が制作した3体の大日如来像が一堂に会するという、画期的な展示となった。中の一体、すなわち奈良忍辱山円成寺のそれは、現存する最初の運慶作品にして最高の逸品との呼び声の高いものであり、ずっとずっとずっと、と三度連呼してしまうくらい実見したい仏像だった。ここのお寺、柳生の山中にあってとても行きにくいのです*3。さらに真如苑大日如来は、数年前オークションで海外流出かと騒がれたもので、これまた話題性抜群の仏像であった。他にも浄楽寺の毘沙門天立像、不動明王立像なども出展される。とにかくこれらの「運慶たち」が全部まとめて並んでいるのである。涎、いや、涙が出るぞ。
二階の展示室に勢い込んで駆け上がると、いきなり円成寺大日如来が鎮座ましましている。もう頭の中が真っ白になって阿房のように佇むばかりである。身に纏った気配のただならぬことと言ったら。如来の前で足がまったく動かなくなってしまった。どうしても見たいと思っていたものが目の前にある幸福をしみじみと噛み締めていた。
信仰の場に置かれた仏像にはやはり特別な意味があって、その文脈の中で対峙することが本来であろう。しかし、鑑賞するという観点からはやや物足りなさが残る*4。その点、こうした美術館、博物館に出展された時は、心置きなく眺めることができる。心の中で静かに手を合わせて、隅から隅まで(後ろは見えないけれど)味わい尽くしたのであった*5
午前からおやつ時くらいまではけっこうな混雑ぶりであるようだ。夕方になると「俺の大日如来」状態になる。出かける方のご参考まで。

*1:http://www.planet.pref.kanagawa.jp/city/bunko/kanazawa.htm

*2:http://www.planet.pref.kanagawa.jp/city/bunko/tenjiannai.htm

*3:バスは午前中に3本、午後に2本のみ

*4:暗い、遠い、狭いなど

*5:さほど広くない展示室に一時間半滞在、うち八割は円成寺大日如来の前にいた