カバーする安藤裕子

大人のまじめなカバーシリーズ (初回生産限定盤) (DVD付)安藤裕子の新譜「大人のまじめなカバーシリーズ」はデビュー以来細く長く続けてきたカバー曲をまとめたアルバムだった。
世間には昔の名前で出ています的なかつての人気歌手が、自らのオリジナルを創作することなく、他人のヒット曲を縮小再生産するだけの存在に成り下がっているケースがままある。もはやプライドも何もあったものではない。手垢にまみれた抜け殻の「カラオケ」をしたければ、密やかに誰もいないところでやればいいのにと思う。
そういうことで、カバーは嫌いで、自分の愛するミュージシャンがそういう行為に及ぶとひどく哀しい気持ちになる。安藤とて例外ではない。さすがにいかにもなヒット曲、誰もが知る曲ばかりを選ぶことはせず、ちょっとマニアックでニヤリとさせられる選曲ではあるものの、他人の軒先を間借りしていることには変わりない。そこがとても残念に思う。私だけかもしれないけど。
安藤の楽曲は最初の2枚「Middle Tempo Magic(CCCD)」「Merry Andrew」が断然好みで、それ以降はなんだかどんどん陳腐で退屈なものになってきたのではないかと案じている。一区切りをつけるためにこれまでのカバー曲集を出すのはそれとして、次のオリジナルアルバムではかつての得体の知れない世界観を具現化する歌詞とメロディーを再構築してほしいと願う。