奇跡

是枝裕和監督の新作は「誰も知らない」以来の子どもたちを主演とするものだ。邦題の「奇跡」より英題の「I wish」の方がこの映画の言わんとするところをよく表している。親子四人が再び幸せな家庭を取り戻すことがないのは、夢の中で太陽の塔(四人暮らしだった頃の象徴)が解体されるところや、友人の一人が死んだ愛犬の生き返ること(ありえない)を祈るところなどから、容易に予想できる。起こるはずのないことをどこかでわかっていながら、それでも願わずにはいられない子どもたちの心持ちがいじらしく切ない。そして非現実な奇跡より現実的な願いを選択することになる彼らは、そのことによって自らを取り巻く世界のありようを確かに現実として認識している。大人になるって哀しい。
 公式サイト http://kiseki.gaga.ne.jp/
子役然とした臭い演技をする子がいなくてよかった。あと新幹線が祈りの対象なのにほとんど映らないのも想像力を喚起させて好もしい。神様は簡単に見えてはいけないよね。長澤まさみが案外いい。大塚寧々も。