クレイジーハニー

morio01012011-08-21

このご時勢に「つながることは暴力だ」と訴えるのにはずいぶん勇気がいったことだろう。人と人が力を合わせる、人と人が理解し合う、誰もが涙する美談には欠かせないことかもしれない。しかし、そういうものを信じ平然と他者に要求したり期待したりするのは、鈍感で想像力に欠ける輩のなせる愚行であろう。
売れなくなったケータイ小説作家がブレーンとともにトークショーを開く。そこに集まるのは彼女を支える熱心なファンたち。ところが、破滅的な今の状況に混乱する自意識過剰な作家は、そのファンたちに対して悪態をつきながら、さらに自分を愛することを求める。
表面的にはそういう物語である。しかし、これがなんらかの喩であるとしたら。たとえば小説家が某国の総理大臣、ブレーンが支配的に寄り添う某大国、ファンがどこかの国の国民……*1ポピュリズム衆愚政治、さらには国際関係の現実など、疑いだしたらきりがないほど、多義的な解釈を許す設定と内容である。そして、どう受け取ったとしても、決して間違いではないだろうし、穿ちすぎでもないと思う。ドタバタ喜劇が一転シリアスな現代模様として相貌を変える。本谷有希子*2の凄みを強烈に感じた。
長澤まさみの芸能人オーラが半端なくすごい。リリー・フランキーも熱演である。本谷の舞台には欠かせない吉本菜穂子も、いつものいい味わいを醸し出していた。8月5日の初日公演に接した。渋谷パルコ劇場で鑑賞。
 公式サイト http://www.parco-play.com/web/play/crazyhoney/

*1:将軍様と4千年の歴史とマスゲームの得意な人たちでもいい

*2:http://www.motoyayukiko.com/