東京ジャズに酔う

Voice往く夏と来る秋を感じるこの時期恒例の東京ジャズに今年も乗り込む。もう何回目だろう。もちろんおめあては上原ひろみである。
初日の菊池成孔も聴きたかったのだけれど、大阪に戻る用があったため、土曜日夜のチケットだけを確保した。ところが、台風である。朝方に一時新幹線が止まってしまってひやひやした。なんとか遅れも出ず、予定通り東京に出てこられた。やれやれ、と力を抜いて言ってみる。
会場の東京国際フォーラム前の広場では、いつものように野外ライブが催されており、屋台の料理や酒を手に、皆、思い思いに音楽を楽しんでいる。それはそれはいい雰囲気だ。
2日目の夜の部は「GROOVE」と銘打たれている。今一つピンと来ないけれど、それに惑わされたのか、一組目のバンド*1はなんだかつまらなかった。音楽に乗せられてつい立ち上がって踊り出すのはいい。しかし、MCで無理矢理客を立たせて、それで演奏するというのはいかがなものか。自分たちの演奏力、表現力のなさを白状しているようなものではないか。客にノリを強要する輩は信用ならないのよ。それに較べて二組目のインコグニートは素敵だ。客の乗せ方もたいへん上手で、曲にあわせて自然に立ち上がりたくなる、立ち上がってしまうような雰囲気を作っていた。こうでなくっちゃ。震災後の日本への真摯なメッセージも心に響いた。
そして上原。もう圧倒的です。知らぬ間に涙がこぼれていた。今年はアンソニー・ジャクソンサイモン・フィリップスとのトリオで、新作をひっさげての登場だった。押しも押されもせぬグラミー賞ピアニストは、以前にも増して力強く繊細でリリカルになっている。1曲目「Voice」のイントロですでに会場全体を鷲掴みにしていた。そこからは怒濤のお楽しみタイムで、あっという間に1時間半ほどが過ぎ去った。ファーストアルバムに収められている懐かしい「Dancando No Paraiso」と「Summer Rain」では、上原の驚異的な成長*2を見せつけるかのごとき演奏だった。会場の拍手と声援の凄さと言ったら! 終演後は総毛立ちぞわぞわしたまま立ち尽くす。
来週は上原と矢野顕子の共演を観、年末には今日と同じトリオのライブを2本観る。それを励みに、じゃないや、仕事もがんばろ。

Tokyo JAZZ Festival 2011 / 東京国際フォーラムホールA
上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクト feat. アンソニー・ジャクソンサイモン・フィリップス

  • Voice
  • Flashback
  • Now or Never
  • Beethoven's Piano Sonata No.8 Pathetique
  • Dancando No Paraiso
  • Summer Rain(アンコール)

※10月15日にNHK BSプレミアムで放送予定あり。

*1:quasimode

*2:まだデビューして8年しか経っていない