綿矢りさ『夢を与える』

morio01012007-02-15

青山七恵の『ひとり日和』が読みたくて、「文藝春秋」3月号を買ってきた。ほぼ同じタイミングで単行本が刊行されているけれど、読むだけならこっちの方が安いので雑誌にした。それに芥川賞の選考委員の選評とか、石原慎太郎村上龍綿矢りさの鼎談も掲載されているし。選評のことは青山の小説を読み終わってからまた感想(苦笑)などをものしてみたいが、鼎談の方は若い女性の前で脂下がったおっさん二人がはしゃいでいる風情である。「大器は早世する」(石原)とか、「三人とも見栄えもさほど悪くない」(村上)とか、自分で言うな。
夢を与える
さて『夢を与える』は芥川賞受賞後に刊行される初めての作品であるが、描く世界は前2作とはずいぶん違うものになった。これまでは良くも悪くも「等身大」ということばがふさわしいものであったのが、芸能界に生きる少女の生活という、一般人にとっては別世界のできごとを描く。物語がどう転ぶのかが気になってページを繰る手を急がせたものの、少女の18年間の成長を追うのに忙しくて、なんだかそれだけで終わってしまったような憾みがある。『蹴りたい背中』にしても『インストール (河出文庫)』にしても、描く世界は狭いながらも奥行きの深さ、厚みとか空気感とか、筋立て以外の部分がとても魅力的だった。そういったものが新作からは残念ながら感じられない。また次かね。
http://book.asahi.com/clip/TKY200702080285.html
晩ご飯はアスパラガスのペペロンチーニとニンジンスープ。スープはニンジンを皮ごとごしごしと摺り下ろして作った。bk1から本が届く。とりわけ『シネマの記憶喪失』と『東京から考える 格差・郊外・ナショナリズム (NHKブックス)』が楽しみである。
揺れ動くニホン語―問題なことばの生態シネマの記憶喪失東京から考える 格差・郊外・ナショナリズム (NHKブックス)物語の役割 (ちくまプリマー新書) 変わる方言 動く標準語 (ちくま新書)古典再入門―『土佐日記』を入りぐちにしてはじめての文学 宮本輝