破綻したデザイン

morio01012007-08-27

講談社現代新書のカバーデザインが杉浦康平のものから中島英樹のものに替わって、まもなく3年になる。中島のデザインはカバーの中心に単色の正方形を置き、その上部にゴシック体でタイトルと著者名を配する。対して杉浦のそれは、内容と深く関係する絵と文字が渾然一体となって散りばめられており、他の新書と比べても圧倒的な異彩を放っていた。

 新書にはいろいろな内容のものがあるので、これだという明確なデザインはできません。結局、どういうかたちで抽象性をもたせつつ、書店で並べられたときに、ひとつの塊に見えるようにするかが問題になります。
 それで、もっともデザインのない、無意味な形としてどういうものがいいかな、と考えた時に正方形というカタチが浮かんできました。丸とか三角とか四角というのは、もともと自然界にある形です。デザインと呼んでいいのかどうかもわからない。ただ、丸や三角は色によって意味が出てきますよね。丸だと日の丸がいい例です。やっぱり四角が一番無意味だと思います*1。(講談社BOOK倶楽部サイトより)

カバーは本の中身と無関係でいいとする中島の主張もわからなくはないが、雄弁に己を語り独特の存在感を見せていた杉浦のデザインの前では、なんともモノとしての魅力が感じられない。だいたいカバーの色だけで本を買いたいと思う人などあるのだろうか。
というようなことを考えていたら、ここ半年ほどの講談社現代新書のカバーというか、帯がおかしなことになってきている。右上の写真を見ていただくと、異常なまでの太さの帯(カバーの右側に置いた)がカバーを覆うことになるのがおわかりいただけよう。もともとのカバーで見えるのは、書名と著者名だけである。そして極太帯には饒舌なまでの説明文が施されている。裏側も然り。これでは中島の意図する「中身と無関係、無意味」なデザインは台無しである。変更当初は中島の考えを尊重して正方形にかからない幅の帯だったのだ*2
どんな裏事情があったのか知る由もないが*3、少なくとも講談社の考え方が変わったことだけは間違いない。デザインをぶち壊された中島がそれをよしとしたのかどうか、とても興味深い。
■タコさんの新書デザイン話もぜひ → http://taco.jugem.cc/?eid=718

*1:http://shop.kodansha.jp/bc/books/hon/0411/nakajima.html

*2:写真のものでいうと、茶色の部分までの幅

*3:そのうち暴露されるかもしれないけれど