渦会議と島本理生

あなたの呼吸が止まるまで朝から新宿に出て仕事関係の知人と会い、あれやこれやと打ち合わせをする。お昼過ぎに職場へ。ここからいつ果てるともしれない会議スパイラルに突入する。あまりのスパイラルっぷりに思わず眠気に襲われて意識を失いそうになるも、なんとか最後の一線で踏みとどまった。しかし、週明け締めの仕事などを投げつけられてしまい、結局、自分の溜息に飲み込まれながら沈んでいったのだった。
島本理生の『あなたの呼吸が止まるまで』(新潮社)を読了する。島本は同年代の女性作家*1の中では一番贔屓にしているのだけれど、『ナラタージュ』(角川書店)以後の作品はどうも頭でっかち*2で上滑りな印象だけが残る。『大きな熊が来る前に、おやすみ。』(新潮社)もそうだったし、この新刊もまた同様であった。「舞踏家の父と暮らす小学生女子が信頼する人から性的虐待を受ける」という設定自体がおよそ一般性を持つものではなく、特殊な立場の人間の特殊な身の上話以上の興味を引き出してくれないのだ。そういう面では芸能人の生活を描いた綿矢りさの『夢を与える』(河出書房新社)と同じで、どこか意識の向こうへ作品が乖離していく危うさを感じてしまうのである。
入り込めずにどんどん醒めてしまうというところは、退屈至極な会議スパイラルと似たものがある(と強引に結ぶ)。

*1:たとえば芥川賞を取ったあの人たち

*2:作り物臭い