瀬野さんの針穴写真展

morio01012008-05-17

初夏の京都駅に降り立つ。この時期の京都は修学旅行生でたいそうなにぎわいを見せている。黒や紺の群れをかき分けるようにしてバス乗り場へ急ぎ、ちょうど滑り込んできた206番に乗り込んだ。
瀬野里美さんの針穴写真展「Un Homme, Une Femme*1」を見に行った。場所をよく確かめもせずに行ったものだから、バスを降りてからギャラリーまで辿り着くのに難儀する。そもそも右京の方だと思い込んでいたのが間違いのもとで、東大路通北大路通の交わるあたりというところで,左京であることに気付くべきであったのだ*2。今週は魂が抜けきっていたことにしておく。
個展の会場は、趣味性の高い書籍や雑貨を扱う恵文社*3に併設されるギャラリーで、とても雰囲気がよい*4。ゆったりとした穏やかな空間で、知的で趣味のよさそうな人たちが思い思いの時間を過ごしている。近所にこんな店がほしいとうらやましくなった。
瀬野さんの写真は一年前に大阪で開かれたグループ展で初めて見て、あまりの素晴らしさにうちのめされたのだった*5。今回もその時と同じテーマであるモノクロ・ポートレートでまとめられている。瀬野さんは針穴写真独特のゆらぎやボケ、滲みを、人物の息づかいや情動の現れであると積極的に読み替え、何気ない場面を特別な一瞬に昇華させている。どの写真も意外性に満ちていて、おおいに想像力が刺激される。白と黒と赤*6が明滅する写真は、優れて文学的な存在となっていると言えようか。目が悦ぶというより、脳の襞がうち震えるような感触のある写真である。いろいろ考えさせられるので見飽きることがない。
幸運にも瀬野さんと話をすることもできた。これから先のあれやこれやのこと*7を厚かましくお願いしたりもする。満たされた思い(写真を見た)と満たされない思い(もっと見たい)を抱えてギャラリーを出たのであった。
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*1:http://www.keibunsha-books.com/gallery/index.html

*2:瀬野さんとした会話でもきっと頓珍漢な受け答えをしたはずである

*3:http://www.keibunsha-books.com/

*4:あまりカメラ機材をむき出しにして行くような気配ではない

*5:07/4/29日記 http://d.hatena.ne.jp/morio0101/20070429

*6:マットが真っ赤

*7:ま、針穴魂ですけどね