キング・オブ・ホトケ

morio01012009-09-07

夏の古刹古仏巡り、そろそろ締め括りが近づいてきた。奈良の大物に会いに行くことにした。
奈良の寺と言って、まず名前の挙がってくるのは、法隆寺*1東大寺*2であろう。もちろんこれに勝るとも劣らない名刹綺羅星のごとく存在しているのだけれど、知名度の高さという点ではこの二つの寺が飛び抜けていると思われる。法隆寺にはエヴァ仏像*3を見るために先月行ってきたので*4、今日は「キング・オブ・ホトケ」、大仏の代名詞*5である盧舎那仏を安置する東大寺にでかけた。
月が変わって多少気候も穏やかになってきたせいか、東大寺は観光客*6でたいそう賑わっていた。豪壮な南大門や大仏殿はいつ見ても圧倒される。運慶と快慶の手になる二つの仁王像にはうっとりするものの、本尊盧舎那仏はただ大きいだけに思われて、造形物としての美しさはさほど感じられない。もっとも美術品ではなく信仰の対象だから美云々だけを問題にするは適切ではないだろう。もとよりあの大仏は「大」であることに最大の価値があるわけだから。
今日の真の目的は別のところにある。早々に大仏殿を後にする。
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大仏殿から東に向かって少し登っていくと、お水取りで知られる二月堂や法華堂(三月堂)がある。東大寺の伽藍は創建以来幾度も火災に遭っており、鎌倉から江戸の頃に再建されたものも多い。その中で法華堂だけは当初から残っている東大寺最古の建物である。ここに安置されている三目八臂の不空羂索観音がすばらしく美しいのだ。拝むのに別料金を徴収されるのも致し方なし。
堂内には十六体の仏像が安置され、うち十二体が国宝である。この国宝密度の高さはさすがである。天平時代の造立になるものが十四体あり、見応えがありすぎてクラクラする。仏像と向き合えるように畳敷きの腰掛けが用意されていて、しっとり静かな堂内で無心になって見つめることができるところも気が利いている*7。30分くらいぼんやりする。贅沢である。
世界遺産に指定されている春日大社一帯の原始林を散策し、新薬師寺*8へ向かった。東大寺を作らせた聖武天皇の妻、光明皇后が、病弱な夫のために建立した寺である。本尊はもちろん薬師如来である。こじんまりとした本堂にはその如来を取り囲むように十二体の神将が円陣を組んでいる。いずれも天平時代に作られた塑像(もちろん国宝)である。これがなんとも優美で力強い。一体一体の造形が実に個性的で見飽きることがない。類型化し細部に磨きをかける方向に進んだ平安の仏とはまるで違う。ここでも30分ほどぐるぐると十二神将の回りを野良犬のように歩き回っていた。この寺で唯一残念なのは本堂東側の窓にはめ込まれたステンドグラス(瑠璃光)である。確かに薬師如来は東方浄瑠璃世界の教主ではあるけれど、それをわかりやすすぎる形で再現するのはいかがなものか。国宝も台無しである。
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近鉄奈良駅まで奈良公園を通り抜けて戻ってくる。途中にある興福寺は、スーパースターの阿修羅が九州国立博物館に出張中のため、中には入らなかった。また秋に戻ってきた時に来ようと思う。

*1:法隆寺 http://www.horyuji.or.jp/

*2:東大寺 http://www.todaiji.or.jp/

*3:百済観音

*4:http://d.hatena.ne.jp/morio0101/20090816

*5:鎌倉ごめん

*6:中心は外国人観光客と修学旅行生である

*7:別料金なので修学旅行生があまり入ってこないのも○

*8:薬師寺 http://www.k5.dion.ne.jp/~shinyaku/