写美で写真展をはしごする

morio01012010-01-11

休日の朝、世田谷区役所方面へ流れていく新成人の話し声を遠くに聞きながら惰眠を貪っていると、彼らを狙って核兵器廃絶を訴える団体が拡声器で声高に演説をし始めて、叩き起こされた。こやつらの傍若無人な行為の方がよほど核より私の生活を脅かしている。自分たちを「絶対正義」だと信じている人たちは、他に対する想像力や思いやりを欠くことが多いのだなぁ*1
昼から恵比寿の東京都写真美術館*2へ行くことにした。いつものように渋谷行きのバスに乗ったところ、途中から大渋滞に巻き込まれて、普段の倍以上の時間がかかった。もっともほとんど音楽を聴きながら居眠りをしていたのだけれど。
木村伊兵衛アンリ・カルティエ=ブレッソン 東洋と西洋のまなざし*3」は泣く子も黙るスナップ写真の東西の巨人を対比的に見せるものである。たいへんな混雑ぶりで、二人の人気の高さをあらためて知ることになった。ただ木村とブレッソンのプリントを見ることができる楽しさはあるものの、写真自体はよく知られたものばかりで、かつ自分でも手元の写真集で目にしているものだから、さほど新鮮味や驚きがあるわけではない。不遜な物言いだけど。人垣の隙間から静かな心で写真を見て回った。
4月25日橋続けて階下で催されている「日本の新進作家展vol.8 出発 6人のアーティストによる旅*4」を見る。石川直樹・百々武・内藤さゆり・尾仲浩二さわひらき・百瀬俊哉の6人の作品が並べられている。撮影場所や表現手法は各人各様であり、旅という異空間での写真家の目の有り様を楽しむことができた。とりわけ石川直樹の「富士山」と内藤さゆりの「4月25日橋」に心が惹かれた。石川の富士山は風景としてのそれではなく、剥き出しの生身の山を感じさせる原初的な力がある。一方の内藤の写真は穏やかな色使いがたいへん素敵である。あたかも水彩絵の具で描かれたかのような淡い色のポルトガルの風景が心に響く。人がいないのに、人を感じる写真である。
売店では「出発」の目録と内藤の写真集、さらにはマイケル・ケンナの北海道の写真集*5を購った。