猫が空を飛ぶ

音楽堂身のこなしも軽やかに宙を舞う猫の姿が好きである。飛んでくるがゆえに、いろいろとややこしいことをするのはまた別の話。
その空飛ぶ猫をジャケットにいただく矢野顕子の新作がとてもよい。「音楽堂*1」と題されたそれは、10年ぶりのピアノ弾き語りアルバムで、15曲を収める。自身の新曲3曲の他、くるり上條恒彦ムーンライダーズ岡林信康ELLEGARDEN和田アキ子上原ひろみ山口百恵らの曲をカバーしている。
かつて昭和女子大学人見記念講堂での上原ひろみとのピアノデュオライブで披露した忌野清志郎に捧げる曲もある。その会場には退院したばかりの忌野も来ていて、楽屋を訪ねる写真が後日スペースシャワーTVのサイトに掲載されていた*2。とても幸せそうな笑顔が印象的だった。
このアルバムが完成する経緯が「ほぼ日刊イトイ新聞」に掲載されている*3矢野顕子の音楽を支える人々の物語を知ることができる。そこにあるのは、とても親密な人間関係である。またCDショップで配布されるこのアルバムのチラシには、親交のあるアーティスト達*4のコメントが寄せられているが、これもまた特別な気配に満たされている*5
  ピアノの音だけでなく、ピアノの置いてある空間の響きを捉えているアルバムだ(坂本龍一
褒め方が微妙な感じがするけれど、坂本のコメントがあること自体、驚きである。清志郎だったらどんなことばを並べただろう。