応挙の松

屏風に描かれた松といえば、長谷川等伯の「松林図屏風」(東京国立博物館蔵:国宝)のことがただちに思い起こされる。深遠なる空間に明滅するかのように揺蕩う松林の姿はただただ美しい。その等伯から遅れること約200年、円山応挙にも息を飲む松の屏風の名品がある。国宝の「雪松図屏風」である。
今秋、三井記念美術館では開館五周年記念特別展「円山応挙 空間の創造*1」が開催中である。この特別展の目玉が「雪松図屏風」である。煌びやかな背景の金の上に雪を被った松が優美なラインを踊らせている。金と墨と紙の白を巧みに活かした、実に華やかで情感溢れる図柄である。幽遠な等伯の松とはまったく異なった視線、技法でものされている。
本展では応挙がいかに立体的な空間を二次元の世界に構築しようとしたかということをテーマに作品を選定している。遠近法を駆使して京都の風景を描き込んだ眼鏡絵は、舶来最新の描画法をいち早くわがものとしたという点で当時の人々を驚かせたという。確かに見慣れた平面的な大和絵とは趣を異にしており、応挙が空間構成に考えを巡らせていたことがよくわかる。
そして本展のハイライトであるあまたの屏風、襖絵。圧倒的であった。先の「雪松図屏風」をはじめとして、「雲龍図屏風」「雪梅図襖・壁貼付」「松に孔雀図襖」(いずれも重要文化財)など、その前で足が動かなくなるほどの艶めかしさで大画面の中に誘い込む。とりわけ応挙の二大傑作とされる「雪松」と「孔雀」が一室にぐるりと置かれている豪華さと言ったら。この展示室を見るだけでも行く価値があるだろう。11月28日まで。
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いずれも三井記念美術館のエントランス。素敵だ。