ルーシー・リーの陶芸

morio01012010-12-11

大阪中之島にある市立東洋陶磁美術館*1で今日から「ルーシー・リー*2」が始まった。会期は2月まであるのだけれど、そのうちになどと油断していると、東京の時のように見逃してしまうおそれがある。急に降り出したわずらわしい雨をものともせず、初日に張り切って出かけてきた。
19世紀末から20世紀初頭にかけてのウィーンの退廃的かつ先鋭的な美意識がこの陶芸家の作品にも強く息づいていることは、すでに多くの指摘のあるところだ。彼女の作品の特異なフォルムや目を惹く美しい色彩、さらに無機的でミニマルな線描などは、まさしくクリムトやシーレ、ホフマン、ロース、ヴァグナーら、ウィーン分離派に端を発するアール・ヌーヴォーの系譜に連なる性質を色濃く見せていると思った。とりわけ高度にデザインされた首長の線文円筒花器にそれを感じる。
酸化鉄やクロム、銅、コバルト、マンガンなどを扱い、エメラルドグリーンやピンク、ターコイズブルー、レモンイエローなどの色彩を生み出す独創性は、陶芸家のものというより薬品を厳密に調合する科学者の所為であろう。そう考えると、温度管理を徹底するために、火ではなく電熱線を使う窯もまた、同じところから要請された科学的な設備ということができる。いや、しかし、そういう状況証拠的能書きは作品の美とはひとまず切り離すべきだろう。「綺麗だなぁ、いいなぁ」と感じる幸せを噛みしめるべきである。
多くの印刷物でリーの器には接してきたが、本物の醸し出す生々しい存在感は、とうてい2次元の表象などでは伝えきれないものであった。百聞は一見にしかずと当たり前のことを今更ながら思う。
ついでながら、併設展の出展物としてこの美術館が所蔵する「油滴天目」(国宝)が出ていた。僥倖&眼福。