ゾウガメのソニックライフ

morio01012011-02-03

昨年5月以来のチェルフィッチュ*1の公演に接する。会場はオープンしたばかりの神奈川芸術劇場*2である。やけに人が多いなと思ったら、某J事務所のタレントが主演する公演が同じ場所で催されていたのだった。ふん。
  満ち足りた生を送りたいものです。それには結局日常が大切です。
絶望的である。
そもそも主宰者の岡田利規が「日常に価値を見いだすこと」に懐疑的であり批判的であることを公言している以上*3、この提言はアンチテーゼ以外の何ものでもないわけで、くだらない日常から逃れるために夢や旅行という非日常的時空に逃避しようとしても、それすら日常の断片でしかないことを知り、ま、もういいか、死んでないし、といううんざりの向こう側にある諦観というか、やけくそというか、まさにこの文章のようなぐだぐだ感いっぱいの中で結末を迎える。
舞台には三つのレイヤーが設定されており、それぞれで芝居が進行する。相互に関係したりしなかったり。台詞を言っている人物や激しく意味不明な動きを繰り返す人物より、背景でボンヤリ佇んでいる人物の方が重要な役割を担っていたりもする。語る人と語られる人がいつどこで入れ替わるか、それすら不分明である。しかし、確かに日常とはそういうものである。私の考えは本当に私の考えなのだろうか。
これまでに観たものの中では比較的理解しやすく感じた。特に後半のくだりはストレートに受け取って普通に笑える。終演後「あんなのでいいのか」などという声が聞こえてきたりもしたけれど、いいじゃないか、わかりやすくても。それもまた日常である。
  ゾウガメのソニックライフ公式サイト http://zougame.chelfitsch.net/
新しい神奈川芸術劇場の施設はとても立派だった。やや堅めの椅子は終演頃には臀部の痛みとなって襲いかかってきた。座布団がほしい。

【以前のチェルフィッチュ関連の記事】

*1:http://chelfitsch.net/ 音が出ます

*2:http://www.kaat.jp/

*3:公演での配布パンフレットに記述あり