陽気に振り回される人々

世田谷線に乗ると、黒いTシャツにセーター、フリース、マフラー、そしてダウンを着込んだ人が大汗を流していた。至極当たり前の2月の格好だけれど、今日の陽気の前にはまったくの負け戦である。三軒茶屋に着く頃には、フリースとマフラーとダウンは彼の手荷物と化していた。
そして私は大阪行きの新幹線に乗るべく、ぎりぎりの時間で移動をしていたのに、折からの強風に吹き飛ばされたビニールが山手線の架線にひっかかり、電車が運転見合わせになってしまう。そして見事にのぞみに乗り遅れる。富士山を眺めるはずの私の指定席は、むなしく東京の空気を運んだことであろう。やれやれ、とほんとうに口に出しそうになった。