猫を撫でたくなる

猫とあほんだら猫の散歩道桜の花の咲いている頃だったか、小説家の書いた猫の本を二冊続けて読んでいたのだった。町田康の『猫とあほんだら』(講談社)と保坂和志の『猫の散歩道』(中央公論新社)である。
町田も保坂も猫好きとして知られており、これまでにもあの憎らしくも可愛い奴らのことをしばしば文章にものしている。保坂の文章がやや乾いた客観的な猫との生活の点描であるのに対し、町田のそれは猫に対する激しい情動がそのままうねうねと表現に乗り移ったような文章*1になっている。猫という存在が作家の心の奈辺に響くのか、その違いが作品の色合いの差となっているのだろう。重く辛いが、自分の内側にある猫への思いは、町田の感じ記すところに寄り添う。
ああ、猫が触りたい、撫でたい。