音楽は人から生まれる
毎年12月は上原ひろみのライブにでかける。東京に出てきて7回目の冬もそれは変わらない。今年はアンソニー・ジャクソン、サイモン・フィリップスとのトリオでのツアーである。二日間の東京公演はそのファイナルとなる。
夏の東京ジャズでこのトリオの演奏に接した時にも、彼らの音楽の強度に圧倒されたのだけれど、さらに世界各地を経巡り、より熟成を深めたコンビネーションから繰り出される力強さと繊細さは格別なものになっていた。名うてのジャクソンとフィリップスを得て、上原の演奏はますます自在に冴え渡ることになったと思う。かつてのトニー・グレイ、マーティン・ヴァリホラら、バークリー音楽院の仲間との親密なトリオとは異質な、激しく鬩ぎ合う緊迫感やスリルがあった。1曲1曲が異様に長く複雑で、聴いてる方もどこまで耐えられるかを試されていたように思えた。
そういうことを感じたのは私だけではないらしく、すべての演奏が終わった後のスタンディングオベーションのすさまじさと言ったら。特に最終日のそれは、滅多に見られないほどの熱狂ぶりだった。上原らが2度目のアンコールに応えて演奏したのも、そうした思いが確実に伝わったからだと思う。
上原は以前ある音楽番組で「音楽は音楽(の知識)から生まれるのではなく、人との関わりの中から生まれるのだ」ということを発言していた。上原のライブはすべてインプロヴィゼーションから紡ぎ出されるのであるから、極めて当たり前の認識であろう。しかし、そのことが実際に達成されること、しかも高度な次元で音楽として形象化されるかどうかは、また別の話である。何かに感謝せずにはいられないほどのすばらしい二日間だった*1。
セットリストは折り込みます。
VOICE JAPAN TOUR 2011
上原ひろみ ザ・トリオ・プロジェクト feat. アンソニー・ジャクソン&サイモン・フィリップス
2011年12月3・4日 東京国際フォーラム ホールA
【1部】
- Voice
- Now or Never
- Labyrinth
- Temptation
- Desire
【2部】
- Delusion
- Flashback
- Beethoven's Piano Sonata No. 8 Pathetique
- Haze
- Dancando No Paraiso
【アンコール】
- Summer Rain
- Joy(4日のみ)
*1:ドリカムの中村氏の感想 http://blog.dctgarden.com/2011/12/04/post_983.html