地上と空の間の写真

nap新宿駅からゴールデン街を抜けた先にある新宿眼科画廊で開かれている岡本明才個展「CAMERA」*1を観てきた。
岡本氏は巨大なカメラオブスキュラを制作し、その中の風景をデジタルカメラで撮影するなど、意欲的に針穴写真の新しい手法を試みている。今回は地上に向けて針穴からの絵を投影し、地面のテクスチャーとその上空の風景を重ね合わせて撮影するということを行う。多重露光的あるいはコラージュ的な写真であるが、その発想や現実にできあがった写真に舌を巻いた。
妙に生々しいのだ。思えば、私たちは地と空の間に存在する。その足下と頭上が二次元の中にぴったり重なり合っている不思議。二つの映像の間にあるはずの私たちの存在は消滅無化し、あとには上と下を同時に睨む視覚だけが静かに残っている。そういう写真である。もはやデジタルかフィルムかとか、針穴で撮りましたとか、そういう次元の議論は超越している。
フィルムの需要がどんどん落ち込み、メーカーの生産体制もいつどうなってもおかしくないほどになっている。好きで続けている針穴写真もいつまで続けられることか。もちろん「金に糸目をつけない」という覚悟を決めれば、なんとか続けていくことはできるだろう。でも岡本氏の針穴写真を見た後では、そうしたことを考えることすら馬鹿馬鹿しくなった。肝要なのはしたいからする。それに尽きると思う。なにか変にまとめてちょっと照れている。
写真はデジタル針穴で撮影した日向ぼっこする愛猫。彼女は日の光に確かに春を感じているようです。