サド侯爵夫人

morio01012012-03-18

それなりの時間で終わるだろうから、お腹をすかせていても大丈夫と高を括っていたら、なんと3時間半(含む休憩時間)を優に超える大長編で、終演時間は22時(18時30分開演)を大きく回っていた。もうお腹ぺこぺこでお尻も痛い。おまけに真後ろの初老の男性(ものすごく服を着込んでいた)はずっと咳が止まらないし。そんなに体調が悪いなら家で寝てやがれ、馬(以下自粛)。と、少しばかり苛々しながらの鑑賞となったわけであるが、最後まで耐えられたのは蒼井優が目の前にいたから。ありがとう、アリス。
歪んだ性癖を持つとされるマルキ・ド・サド侯爵の夫人を主人公とする。これまでに何度も舞台にかけられてきた三島由紀夫の怪作を、かの野村萬斎が演出した。
とにかく膨大な台詞が途切れることなく流れ続ける。あまりの台詞のスピード感に、三島の感性で磨きをかけた大仰で美麗なことばのすべてを聴き取ることは、ほとんど不可能ではないかと思われた。肩の力を抜いて言葉の大河の流れに身を任せるしかない。公演終了後に手に入れたパンフレットには「言葉による緊縛」とあり、なるほどと思った。もはや自ら言葉に縛り上げられるくらいの覚悟がなければ、ついていけないのだろう(そして飽きて眠くなる)。自分の脳味噌の処理能力で勝負できる読書は、つくづく楽でいいと噛み締める。それにしてもこれだけの量の台詞をコントロールし続ける俳優たちの凄み*1と言ったら。そこがこの芝居の最大の見所だろう。
美術、セットは極めて抽象化された造りである。簡素ではあるが、なんらかの喩の妙味が加えられている。衣装とともに、それらの意味や象徴性を読み解きながら観るのが楽しい。世田谷パブリックシアターで鑑賞。
 公式サイト http://setagaya-pt.jp/theater_info/2012/03/post_268.html