ボストンの至宝

morio01012012-04-10

今が盛り、満開の桜を横目で見ながら(ついでに大盛りの花見客も見ながら)、東京国立博物館に赴く。
欧米最大の日本美術のコレクションを誇るボストン美術館から、まさに至宝と呼ぶべき作品が大挙里帰りしてきた。どうしてこんなものまでと思われるような傑作揃いである。その大半は18世紀から19世紀にかけて流出したものである。関わった人物はフェノロサ、モース、ビゲロー、そして岡倉天心という、埋もれていた日本古美術を「再発見」した人々である。「発見」できなかったわが国は、静かに臍をかむしかない。
  特別展「ボストン美術館 日本美術の至宝」
とにもかくにも、国宝級の作品がずらりと居並ぶ。平安、鎌倉時代仏画や中世の水墨画の充実ぶりに驚きながら、やはり今回の目玉は「吉備大臣入唐絵巻」「平治物語絵巻」の両絵巻と長谷川等伯伊藤若冲、さらに曽我簫白らの近世絵画であろう。等伯の龍虎図*1や簫白の雲龍図はいつまでも見ていたい。素敵すぎる。
どうしてこれだけの逸品がまとまって海外に流出しているのだろう。美術品や文化財がどういう経緯で今の所蔵者に至ったかはほとんど明かされることがない。すばらしい作品を目の前にして、鑑賞するよりも、そういうことばかりが頭の中でグルグル巡っているのだった。
豪華な作品群に比して、入館者はさほど多くない。もちろん絵巻物がまともに見られないくらいに人はいるけれど、入館の待ち時間などはまったくない。そこだけは意外だった。普段は非公開の本館北側の庭園の桜を愛でて、あわせてお腹いっぱいになった。

*1:虎のぬいぐるみを買ってしまった