表参道から六本木へ美術館巡り

morio01012009-10-09

3年半ぶりに新装開館なった根津美術館*1に赴いた。表参道からみゆき通りを歩いて行くと、やがて隈研吾が手がけた瀟洒な建物が見えてくる。エントランスのところから雰囲気が抜群によくて、期待感はいや増すばかりである。はたして展示室もすばらしい造りで、よく考えられた照明設備が展示物の美しさをよりいっそう引き立てているように見えた。
一昨日から始まった「新創記念特別展」の目玉は国宝の「那智瀧図」(鎌倉時代)である。以前から一度見てみたいと願っていた名品である。心を掻き立てるようなわかりやすい華やかさはないものの、一筋の滝の流れを異界のものと見立て崇めた中世の人々の思いが、荘厳な気配となって立ち上っているように感じる。ぞわぞわした。この他では「吉野龍田図」「伝藤原為氏筆古今和歌集」「地蔵菩薩立像」などがよかった。展示室2の切の数々も見応えがあった。中国の3000年以上も前の青銅器がずらりと並べられていたのは壮観だった。都心であることを忘れさせるような庭園も見事だった。何度でも行きたい*2
青山墓地を抜けて、次は国立新美術館*3である。ここでは「光」と題した松本陽子と野口里佳の二人展が催されている。私のお目当ては野口である。初期の「フジヤマ」から最新作の「日食(武漢)」まで、ほぼ彼女の回顧展のような豪華なラインナップである。しかも近年熱心に取り組んでいるピンホール写真も40点以上が展示されている。
写真集でしか見たことのなかった「フジヤマ」の淡い色調にまずうっとりし、続いて鮮やかな「星の色」で目を楽しませた後、いよいよピンホール写真「太陽」の展示室に入る。ここだけは漆黒の闇の中、写真にスポットライトのように光が当たり、まるで写真自体が発光しているかのごとき印象がある。鮮烈で息を飲んだ。ピンホールカメラを太陽に対峙させ、光そのものを捕まえようとした作品が居並ぶ。これも一部だけを銀座のギャラリーで見たことがあったのだが、これだけの数がまとまると、圧倒的な迫力である。この一室だけですっかり満腹になってしまった。
図録は野口のだけを買い求め、ついでに立ち寄ったミュージアムショップでは、1000部限定の「太陽」の新作写真集を見つけてしまう。限定という言葉に弱く、すぐさま諭吉一人を人質に出し、これも確保する。88番だった*4。幸せだ。満ち足りた気分で美術館をあとにする。
この後、新宿に立ち寄り、さらに散財することになるのだが、それはまた別のお話。
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*1:http://www.nezu-muse.or.jp/index.html

*2:東京に勤めるようになってまもなく改装のために閉館になった

*3:http://www.nact.jp/

*4:売れてない……