非公開のものを観る悦び

morio01012009-11-08

とても立冬を迎えたとは思えない陽気の中、京都にでかけてきた。45回目を迎えた「京都非公開文化財特別公開*1」を観るためである。初公開5カ所を含む21カ所で「お宝」を見せてもらえる*2。全部回りたいけれど、どう考えても無理である。わずか1週間の公開期間がうらめしい。
まずは東山二条にある西方寺へ。「さいほうじ」といえば、苔寺として知られる西芳寺があるが、それとは別の寺である。1189年に没した大炊御門経宗を開基とする。今回、初公開された。ここには平安後期作とされる阿弥陀如来坐像(重文)がある。寄木造りの丈六坐像で、三千仏光背と呼ばれる円光背を持つ。もともとは白河天皇が建立した法勝寺の遺仏らしい。平安の仏らしくすっきりとした美しさを持っていた。これを拝めただけでも来た値打ちがあった。外庭には衣通姫地蔵尊となって祀られている。本朝三美人の一人とされる女性だが、今でいう近親相姦にまつわる伝説でもよく知られる。その人のお地蔵様、微妙な心持ちでお参りした。
続いて西方寺の裏手にある、やはり初公開の大蓮寺に行こうかと思ったのだけれど、なんとなく気乗りがせず、時間のこともあって、知恩院*3へ向かった。知恩院では我が国最大の二階二重門である国宝の三門が公開されている。いつもは下をくぐるだけの三門の二階内部には、釈迦牟尼像、脇侍2体、十六羅漢像が安置され、狩野派の絵師たちによる極彩色の壁画、天井画が描かれている。中でも狩野探幽が一人で仕上げたという巨大な「龍図」の見事さと言ったら、もう。圧倒的とはまさにこのことであろう。この壮大なスケールの三門にあっては、仏像は建物や絵の力に完全に負けていると感じた。いいものを見せてもらいました。
そして三つ目。東山七条まで下り、三十三間堂にほど近い智積院*4へ赴いた。ここでの目的は障壁画と庭である。まずは長谷川等伯、久蔵の手になる「楓・桜図*5」や「松に立葵図」「松に秋草」などを収める国宝収蔵庫で、桃山時代の絢爛豪華な障壁画を観る。もとは豊臣秀吉のために祥雲禅寺に収められたものが、紆余曲折を経て、この院の所蔵になっている。大好きな「松林図屏風」(国宝、東京国立博物館蔵)とは趣の異なるものであるが、絵の成立の由来*6などを思いながら観ると、曰く言い難い情念でどの絵も迫ってくるように思えた。また宸殿、講堂の堂本印象と田渕俊夫のモダンな襖絵も見応えのあるものだった。さらに小堀遠州の作と伝えられる名勝庭園は中国の廬山を写したもので、コンパクトでありながら雄大な広がりを感じさせる、いかにも京都の寺院の庭らしい佇まいであった。
ここまででお腹いっぱいになる。観たいものは他にもあったけれど*7、それらはいずれまた。
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*1:http://www.kobunka.com/45th/index.html

*2:http://www.digistyle-kyoto.com/event/cat473.html

*3:知恩院 http://www.chion-in.or.jp/

*4:智積院 http://www.chisan.or.jp/sohonzan/

*5:来春の東博での等伯展では目玉になるだろう。すさまじい人でまともに観られるか? 

*6:主君の不幸、愛息の夭逝など

*7:悲田院海住山寺が観られなかったのはたいへん残念だった。