年末の歌舞伎
職場の恒例行事である歌舞伎鑑賞のために国立劇場*1へ赴く。三つの演目*2はいずれも明治のもので、真山青果、坪内逍遙、岡本綺堂の手になる作品である。台詞は現代語に近いし、芝居そのものもシンプルに演出されていて、わかりよいものになっていた。もっともわかりやすすぎて、あとにほとんど何も残らない、かも……。
そういうことが事前に知れ渡っているのか、客席の入りももう一つであった。過去四年はそれなりに埋まっていたのに。大向こうからの掛け声も少なめで盛り上がりを欠いていた。前に見た遠山の金さんとか、忠臣蔵関連の物語の方が人は集めやすいのだろう。三つの中では「一休禅師」が気に入った。中村吉右衛門と魁春の所作がちょっと前衛舞踊のように見えた。衣装の柄や色合い、背景のセットなどもずいぶんとモダンな印象を受けた。
近年盛んに行われている、オペラを完全な現代劇に読み替えるような試みは、日本の伝統芸能には無理なのだろうか。古典が日常生活の向こう側に行ってしまうのなら、そういうこともあっていいと思う。
真山青果作「頼朝の死」 一幕二場
第一場 法華堂の門前の場
第二場 将軍家御館の場
坪内逍遥作「一休禅師」 長唄囃子連中
岡本綺堂作「修禅寺物語」 一幕三場
第一場 伊豆修禅寺夜叉王住家の場
第二場 桂川のほとり、虎渓橋のたもとの場
第三場 もとの夜叉王住家の場
出演:中村吉右衛門・中村富十郎・中村芝雀・中村歌昇・中村歌六・中村魁春ほか