年末の歌舞伎

morio01012009-12-16

職場の恒例行事である歌舞伎鑑賞のために国立劇場*1へ赴く。三つの演目*2はいずれも明治のもので、真山青果坪内逍遙岡本綺堂の手になる作品である。台詞は現代語に近いし、芝居そのものもシンプルに演出されていて、わかりよいものになっていた。もっともわかりやすすぎて、あとにほとんど何も残らない、かも……。
そういうことが事前に知れ渡っているのか、客席の入りももう一つであった。過去四年はそれなりに埋まっていたのに。大向こうからの掛け声も少なめで盛り上がりを欠いていた。前に見た遠山の金さんとか、忠臣蔵関連の物語の方が人は集めやすいのだろう。三つの中では「一休禅師」が気に入った。中村吉右衛門魁春の所作がちょっと前衛舞踊のように見えた。衣装の柄や色合い、背景のセットなどもずいぶんとモダンな印象を受けた。
近年盛んに行われている、オペラを完全な現代劇に読み替えるような試みは、日本の伝統芸能には無理なのだろうか。古典が日常生活の向こう側に行ってしまうのなら、そういうこともあっていいと思う。

真山青果作「頼朝の死」   一幕二場
  第一場  法華堂の門前の場
  第二場  将軍家御館の場
坪内逍遥作「一休禅師」   長唄囃子連中
岡本綺堂作「修禅寺物語」  一幕三場
  第一場  伊豆修禅寺夜叉王住家の場
  第二場  桂川のほとり、虎渓橋のたもとの場
  第三場  もとの夜叉王住家の場
出演:中村吉右衛門中村富十郎中村芝雀中村歌昇中村歌六中村魁春ほか