日食に始まりチェロで終わる

morio01012012-05-21

「見ない者は非国民」くらいの勢いで報じられてきた金環日食の日がやってきた。それほど見たいとは思わない不届き者の私であるが、なんとなく7時半ぎりぎりに目覚めてしまった。
とはいうものの、もともとのモチベーションが低いものだから、何の用意もしていない。日食眼鏡がないと見られないことくらいは承知している。仕方がないので、そこらへんにある紙に小さな穴を開けて、ピンホールレンズのようなものを作った。そこを通り抜けた光の姿を壁に映して見ることにした。→ダメでした……。
あっさり諦めて、綺麗な写真や映像は日本中の人が撮ってるだろうから、あとからニュースとかネットで見ればいいやと、二度寝を決め込んだ。
起きてから、いつも世話になっている自動車整備工場に電話を入れる。21年連れ添った愛車をとうとう乗り換えることにした。6年ほど前に大改修を施したけれど、さすがにあちこち「危険」と言われるような状態になっていた。古い車ゆえ、いろいろなパーツが手に入りにくくなっていることもある。いくら好きでも乗れないのであればしかたがない。英国の小さいやつから、今度は長靴の国の小さいやつになる。夏本番までには届くだろう。
夕方、東京へ。サントリーホールでミッシャ・マイスキーのチェロを聴く。演目はバッハの無伴奏チェロ組曲第2番、第3番、そして第5番である。無伴奏チェロ組曲といえば、1930年代に録音されたパブロ・カザルスの演奏が、完全なるスタンダードとして認められている。マイスキーの演奏はカザルスのとはかなり違う、スピーディーで爽快感を感じさせるものだった。このことはいずれまた。
さて、今週もまたパタパタ励もう(空元気)。

賢治の声を聴く

morio01012012-05-19

宮沢賢治の作品を朗読するという催事*1世田谷パブリックシアターで開かれている。いつもは静かに目で追いかける世界を、声という肉体に直接結びついたメディアで味わう時間は格別なものだった。
 公式サイト http://www.siscompany.com/kotoba/
38人の俳優や舞台人が3人ずつ日替わりで登場する。私が見た(聴いた)のは、本谷有希子段田安則江口洋介の公演である。お目当ての本谷は名うての俳優に囲まれても臆することなく、堂々と賢治のことばを唱えていた。もともと舞台にも立っていたから、手慣れたものだろう。
無造作に本が積み上げられた中に、やや大きめな机が一つ置かれている。三人がそこに集まり、マリンバの生演奏やクラシック音楽が静かに流れる中、よく通る声で賢治の詩や短歌や童話を紡ぎ出していく。背後のスクリーンには印象的なフレーズが踊り、照明も賢治の言葉に合わせて息づくかのように明滅する。朗読であるはずなのに、時に完全なる演劇を見ているような錯覚を覚えた。注文の多い料理店春と修羅よだかの星、永訣の朝、雨ニモマケズポラーノの広場……。よく知っている作品がまるで違った相貌を見せて迫ってきた。
同じ演目でも朗読者によって、まったく違った世界を見せてくれるだろう。残念ながら蒼井優の出る公演はチケットを取ることができなかった。蒼井のでなくてもいいから、ぜひとも別の人の朗読も聴いてみたい。どんなだろ。6月3日まで。

*1:朗読『宮沢賢治が伝えること』

猛烈な金曜日

なんかもう普通に平日にブログを書く気力がわかなくなってる。
やらされてる感満載の仕事にくたびれて、私のソウルジェム*1はすっかり黒ずみ、それを浄化しないとまったくやっていけない(ような気がする)。そういう時はグリーフシードとしてのももクロちゃんに癒してもらうことになる。彼女たちのライブだのバラエティだの、そうした映像にどろりと接する。そういうことをもっぱらやっているので、ますますブログに割く時間がなくなる……。しかし、おかげで翌日からはまた元気になるのだった。
弱ってる時に聴くアイドルソングは麻薬*2」は、けだし至言。
金曜日は恒例のエンドレス会議日だった。いや、この春からは金曜日だけがエンドレス会議日ではなくなった。しかもそこにいるだけではすまない場所に押し出されてもいる。いったいどうしたものか。やっぱり、ここはももクロちゃんに……(以下略、これこそエンドレス)。

忙しいフリをする日常

crossing右から左へやっつけないといけない事柄がとめどなく襲いかかってくるので、何から手をつけなければならないかの優先順位をきちんと決めておかないと、取りこぼしてしまいそうである。というか、時々取りこぼしている。大惨事にならないように気をつけろ、と自戒を込めて記す。
もっともももクロちゃん方面の取りこぼしはないので、どこまでもモチベーションの問題だと思う(うひょ)。
この春から密な付き合いをすることになった顧客たちと下北沢で飲み会があった。今年の人たちは例年以上に活発な質のようで、ものすごいハイテンションのまま2時間があっという間に過ぎ去った。あやうく歌を唄わされそうになったが、「行くぜ!怪盗少女」のサビ部分のフリだけで無罪放免と相成った。もっともそれもどうかと思うけど。笑顔と歌声で〜♪
夕闇迫る世田谷線の踏切で針穴をする。のんびり走る電車が二筋の光の帯になった。

潮風に吹かれ浮かれ調子

職場の催事(非公式)で東京湾クルージングに参加してきた。例の身分不相応役職のため、行きたいとか行きたくないとか、そういう個人的な思いや気持ちはまったく入る余地がない。一も二もなく出席者としてカウントされるのだった。しかし、である。これがとても楽しくて興奮しっぱなしだった。子供か>俺。
  東京湾クルージング http://www.symphony-cruise.co.jp/index.html
約2時間半で東京湾くるりと一回りする。ちょうどお昼時の時間帯でランチ付きのコースである。まずはしっかり腹ごしらえをし、その後は針穴カメラ片手にデッキで気持ちよく潮風に吹かれていた*1。お台場やレインボーブリッジ、ゲートブリッジや羽田空港など、普段は見られない方向から眺めることができ、興奮しきりである。ちょうど飛行機の着陸コースの真下に停船し、頭上を大きなジェット機が過ぎ去っていくところなど、ぎゃーぎゃー声をあげて喜んでしまった。新しく開通したゲートブリッジもやっと間近で見ることができたし、いや、なんかもう大満足である。今朝のあの気怠い気分はなんだったのだろうね。
flag #5 sea
デッキではためく色とりどりの旗と船外通路をデジタル針穴してみた。潮風を感じてください(強引)。

*1:おっさんなので爽やかさにはいくぶん欠ける

安藤裕子の復活

勘違い1週間前の東京公演では、途中で歌えなくなり、予定された曲の演奏がされないまま終演になってしまった。もともと日(あるいは体調、気分)によってライブの出来不出来の差の激しいアーティストではあったけれど、途中でやめてしまうことはさすがになかった。今春の新譜も初動売り上げが半減したらしいし、東京公演の会場でも空席が目立っていたという。昨年のツアーは体調不良*1で後半が打ちきりとなった。そこからの復帰公演でこういう状態だったので、いよいよ安藤裕子もおしまいか、という声がネットでも飛び交っていた。大阪公演もドタキャンとなるのではないかと危ぶみながら、その日を待っていたのだが、特に何のアナウンスもなく当日を迎えた。
ちゃんと始まってちゃんと終わるのか。これほど不安な気持ちでライブの開演を待ったことはなかった。それが1曲目から思いのほか力強い歌声を聴かせてくれたので、それだけで胸が熱くなってしまった。ライブそのものにもきちんと集中しているし、3曲目の「エルロイ」が終わる頃には「今日は大丈夫」と思える状態だった。さすがにMCは少なめだったが、もともと上手ではないし、それは別にかまわない。なによりすべての曲をきちんとしたクオリティで聴かせてくれたことが嬉しかった。「The Still Steel Down」から本編ラストの「鬼」までの迫力ある姿は、完全に「安藤裕子そのもの」だった。
離れてしまったかつてのファンを取り戻すことはたぶん難しいだろう。この先は小さなホールかライブハウスに戻るようなことになるかもしれない。それでもいいと思う。安藤の曲は大勢でわーっと盛り上がってというようなものではないし、むしろそういう親密な空間でじっと耳を傾けるような空気感の中でよい歌を聴かせてほしい。
四つ橋のオリックス劇場は、かつて厚生年金会館と呼ばれていた頃に来たことがあるくらいで、それも一体いつのことだったかすら思い出せない*2。この日の安藤の公演は、ライブそのものとそれを巡る「物語」によって、きっと忘れないと思う。

*1:後に妊娠・出産が発表される

*2:全盛期のレベッカを見に来たのは覚えている

続きを読む